スタートアップ企業ビズリーチの起業プロセスからわかる成功の秘訣

起業を考えている人は、「起業する方法」「成功するための起業のプロセス」など成功法について知りたいと思います。

多くの人が成功する起業方法を知ろうとしますが、決まった成功の起業方法などは存在しません。
しかし、決まった成功する起業方法はなくても、成功確率をあげることは可能です。

この記事ではスタートアップ企業ビズリーチの具体的な起業プロセスを紹介し、起業成功の秘訣を紹介していきます!
本記事を読めば、起業の成功確率をあげるポイントを掴めまるようになりますよ。

1.企業概要(ビズリーチ

創業者:南 壮一郎

2009年に株式会社ビズリーチを起業し、管理職・グローバル人材の会員制転職サイト「ビズリーチ」のサービス開始。

株式会社ビズリーチ
出展:ビズリーチHP

現在はビジョナル株式会社代表取締役社長。
2014年世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」選出。
2015年日本起業家賞2015「米国ビジネス賞」受賞。

ビジョナル株式会社の株式45%所有し、株式価値1430億円(2020年4月5日株価8,830円)を保有。

会社情報(2021年7月)

資本金:2,097(百万円)
売上高:21,492
経常利益:511
従業員数:1,112名

ミッション:すべての人が「自分の可能性」を信じられる社会をつくる。

事業内容

ビズリーチは、即戦力人材に特化した人材プラットフォームをヘッドハンターのみならず企業にも公開し、日本のハイクラス人材の転職市場を可視化しました。

企業は求職者へ主体的にアプローチすることで、優秀な人材をより早く、安く採用できるようになり、求職者も今まで知りえなかった企業から連絡を受けることで、キャリアの可能性と選択肢を最大化できるようになりました。

2.起業プロセス

起業プロセス_ビズリーチ

(1)ビジネスアイディア

社会的課題

これまで、日本の転職市場は可視化されていなかったため、多くの企業はハイクラスの採用を人材紹介会社に任せるしかなく、主体的に活動しにくい状況にありました。
また、ハイクラスの求職者は、限られた選択肢からしか次のキャリアを見つけられませんでした。

商品アイディア

南 壮一郎(南)は、アメリカのビジネスセミナーに参加した際、「LinkedIn」というサービスに出会いました。
LinkedInでは、登録している個人の履歴のデータベースが、企業の人事部を直接結ぶようなプラットフォームになっていました。
このビジネスモデルの一部を用いれば、日本での求職活動の課題を解決できるのではないかと考えました。

(2)商品開発

2007年8月株式会社ビズリーチを設立しました。
7名の仲間とともに、水曜日の夜と土曜日の朝、週に2回だけみんなで集まって、必要最低限のことをミーティングしました。[5]
あとは、メーリングリスト上でのやり取りで捕捉しながら、みんな分かれてそれぞれの役割分担の作業をしました。

商品(ビズリーチ)

転職サイト「ビズリーチ」は、ビジネスパーソン、国内外の優良・成長企業、各業界に精通した一流ヘッドハンターの三者を最適かつ効率的にマッチングする即戦力人材に特化した、ダイレクト・リクルーティングの会員制転職サイトです

企業と求職者が直接やりとりできるプラットフォームで、年収1,000万円以上の求人が3分の1以上(ハイキャリア向け)の転職サービスです。

管理職・グローバル人材の会員制転職サイト「ビズリーチ」のサービス
出展:ビズリーチHP

2021年7月現在
144万人以上の優秀な求職者人材が登録。
累計18,100社を超える企業がスカウトを実践。
登録ヘッドハンター数 5,100人。

(3)マーケティング戦略

ターゲット

求職者:顕在層中心で、年齢層は高めです。
    マネジメント経験のある人材を他社サービスに比べて多く集めています。
    求職者課金型のため、転職やキャリア形成に意欲的なユーザーが選別されています。
    ユーザー登録する際に、職務経歴や現在の年収などの、審査を行っています。
採用者:採用の決裁権を持ち、即戦力人材を求める企業の管理職

ポジショニング

競合(ダイレクトリクルーティングメディア)

①LinkedIn(リンクトイン)
提供企業  :LinkedIn(Microsoft Group)
登録数   :日本では280万人以上
登録ユーザー:潜在層中心
ユーザー属性:全方位型
日本のユーザー層は20・30代が多く、男女比は6:4で男性の方が多くなっています。
プロフィールを登録することで履歴書、職務経歴書代わりになり、企業からスカウトを受けます。
職務経歴書はビズリーチに比べると記載量が少ない。

②リクルートダイレクトスカウト(旧キャリアカーバー)
提供企業 :株式会社リクルート
公開求人数 :約108,800件
ヘッドハンターの数:約3,000名
年収800~2,000万円の求人が充実、海外・外資系求人も満載

③ウォンテッドリー(Wantedly)
提供企業  :ウォンテッドリー株式会社
登録数   :330万人以上(2022年現在)
登録ユーザー:潜在層中心
ユーザー属性:20代~30代の若手中心
登録企業数 :42 ,540社(2022年現在)

④doda Recruiters
提供企業  :パーソルキャリア株式会社
登録数   :237万人
登録ユーザー:顕在層中心
ユーザー属性:全方位型

⑤Eight Career Design
提供企業  :Sansan株式会社
登録数   :300万人以上
登録ユーザー:潜在層中心
ユーザー属性:全方位型
Eightデータベースを利用するため、職種・業種問わず多数のユーザーが登録
役職者のユーザー数が50%以上
職務経歴書の記載ボリュームは少ない。

ポジショニング

ダイレクトリクルーティングでの、ビズリーチの求人企業購買決定要因に対し、

登録ユーザーの転職可能性は、顕在層中心で大きい。
ユーザー属性は、マネジメント経験のある人材が多い。
転職意欲は、登録ユーザー課金型で高い。

これらにより、ビズリーチの求人企業に対応したポジショニングで差別化されています。

プロモーション

ページポスト広告

2013年秋から、ページポスト広告を活用しました。[1]
低コストで、CPAを低く新規会員を獲得していくかが課題でした。
ページポスト広告施策において、年齢・性別・地域・卒業大学などで詳細なセグメントに分け、ターゲットに合わせたクリエイティブとメッセージを効率的な訴求をしました。
新規会員者数を飛躍的に増加させながら、会員登録費用(CPA)の49%削減に成功しました。

Yahoo! DMP活用

2014年、Yahoo! DMPを活用した広告配信を実施しました。[2]
優良顧客率を引き上げ、ビジネスの拡大を図りました。
膨大なデータ量を持つYahoo! JAPANのデータを活用して、優良顧客となり得る潜在顧客層へのリーチを実施しました。

プロセスは、
①ビズリーチの優良顧客データをYahoo! DMPで蓄積・管理
②Yahoo! JAPANのマルチビッグデータと掛け合わせ、優良顧客(会員)になる可能性の高い行動を抽出
③作成したセグメントをYahoo!プレミアムDSPにセットし、潜在顧客層に広告配信

既存手法で獲得した会員に比べてスカウトメールの受信率は1.4倍、一人当たりの受信数は2.4倍になり、優良顧客率は高まりました。

テレビコマーシャル実施

2016年2月からテレビコマーシャルを放映開始しました。[3][4]

当時のビジネス課題は、
「ビズリーチの成長曲線を上げたい」
「toB(企業クライアント)のリード獲得を推進し、契約の流れを増やしたい」

テレビCM内容
訴求先  :採用の決裁権を持つ企業の管理職
メッセージ:「中途採用でも優秀な人材に出会える」
      「即戦力採用ならビズリーチ」

テレビCM効果
関東圏の人事の方々におけるビズリーチの認知度は、2015年の調査では10%でしたが、2018年4月には79%と大幅に増加しました。また、関西の認知度も約50%まで増えました。

テレビCM出稿以前と比べ、サービスの導入企業数は約2倍となり、累計では9,500社以上の規模に成長しました。
ビズリーチ事業の売上は3.4倍、営業1人あたりの売上も3.2倍と伸長しました。

(4)組織つくり

シードステージ(2007年8月 ~2009年4月)

2008年、集まった7名の仲間とともに、水曜日の夜と土曜日の朝週に2回だけみんなで集まって、製品開発を始めました。

2009年4月「ビズリーチ」のサービスを開始しました。

アーリーステージ(2009年5月~2011年12月)

2010年6月会員数が3万人を突破しました。

2010年3月2億円の資金調達しました。
資金調達時は、フルタイムの社員は2人でしたが、資金調達後に創業メンバーうちの4人が社員に加わりました。
2010年7月末で社員数は7人
2011年7月末は21人。

この間、ダイレクト・リクルーティング事業を検証し、会員数増加でPMFが達成されています。

ミドルステージ~(2012年1月~)

2012年1月会員数が10万人を突破しました。

2012年7月末社員数は69人。
2013年7月末に160人になっています。

このあたりから、毎月10人くらい社員を増やしています。
2010年3月の資金調達後、本格的に採用を加速するまで3~4年かけています。

(5)資金調達

2010年3月 - 株式会社ジャフコより2億円の資金調達をしました。
ハイクラス向けダイレクトリクルーティングのビジネスモデルが、合理的な計画と理解されました。

2010年12月に、別会社化したルクサに、ジャフコが5億円の投資をしました。

2016年3月29日総額約37.3億円の資金調達をしました。
ヤフー株式会社の投資子会社であるYJキャピタル、米国セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Venturesなどを引受先とした第三者割当増資等により実施されました。
求人検索エンジン「スタンバイ」事業の拡大、ユーザー機能の拡張や利便性の向上を強化と同時に、クラウド型の採用管理システム「HRMOS(ハーモス)」など、さまざまな新規サービスを立ち上げていくための資金調達です。

(6)ビジネスモデル

多様な収益源による独自のビジネスモデル
出展:ビジョナル株式会社2022年7月期第2四半期決算説明資料

製品価値

ビズリーチは、

求職者には、即戦力の登録者にスカウトが届くハイクラス転職サイトです。

採用企業・ヘッドハンターには、欲しい人材に自ら直接スカウトできるサービスです。
独自の審査を通過した人材のみが登録しており、即戦力人材と出会えます。
自ら探して直接スカウトできるので、書類選考や面談でのミスマッチを減らせます。
候補者と直接やりとりできるので素早く採用活動を進められます。

収益の流れ

ビズリーチの事業系統図
出展:ビジョナル株式会社2021年7月期 通期有価証券報告書

採用企業・ヘッドハンターには、基本利用料+成果報酬型(理論年収の15%)と追加スカウト料金を課金します。

求職者には、タレント会員 30日間コース 3,278円(税込)の一括払い、ハイクラス会員 30日間コース 5,478円(税込)の一括払いの登録料を課金します。

自社の活動

①求職者(会員ユーザー)の増加
ターゲットに合わせたクリエイティブと訴求メッセージによる広告で、求職者の増加を図ります。

②直接採用企業・ヘッドハンターの増加
マス広告による認知度の向上により、直接採用企業・ヘッドハンターの増加を達成します。

③マッチング成約数の増加
データードリブンに基ずくマーケティング戦略で成約数の増加を図ります。具体的には、
優良顧客の顧客行動分析によりセグメントした潜在顧客層に広告配信し、優良顧客会員を増加させ、スカウト数を増加させます。
会員ユーザー行動データ分析により、スカウトタイミングを最適化し、スカウト開封率を向上させます。
直近で活動的なユーザーへの優先的スカウトを実施し、スカウト返信率を向上させます。
職務経歴書の精度向上により人材データベース情報を有効化し、マッチング成約率を向上させます。

3.起業成功の秘訣

(1)ビジネスモデル

ビズリーチは、

・求職者と企業が直接コミュニケーションがとれるダイレクトリクルートサービス
・データードリブンにより最適化されたターゲットマーケティングシステムで、求職者と求人側マッチチングの効率化
・求人企業のみならず、会員や人材紹介会社からも収入が得られる優れた収益モデル

のビジネスモデルで差別化しており、高いマネタイズ力によりグロースしています。

(2)マーケティング戦略

ビズリーチは、

・セグメントに対して訴求内容をカスタマイズした、Facebookのページポスト広告
・Yahoo! DMPを活用し、顧客行動分析に基ずく潜在顧客層への有効な広告配信
・ターゲットを絞り、インパクトのあるメッセージにより認知度を上げたTVCM

でマーケティングを最適化し、売上拡大しています。

まとめ

いかがでしょうか。

最後にもう一度、起業成功のポイントを整理しておきますね。
・ビジネスモデル
・マーケティング戦略

今回は、「スタートアップ企業の起業プロセスからわかる成功の秘訣」というテーマで、これから起業する人や、起業したけれどもなかなか結果がでないという方に向けてお話しました。

スタートアップ起業家といえども、基本は同じです。
是非あなたの参考にして、起業を成功させて下さい。

出展:ビズリーチHP
   ビジョナル株式会社2021年7月期 通期有価証券報告書
   ビジョナル株式会社2022年7月期第2四半期決算説明資料

   LinkedInHP
   リクルートダイレクトスカウトHP
   ウォンテッドリーHP
   doda RecruitersHP
   Eight Career DesigHPn

[1]:Facebook広告活用で新規会員獲得費用を49%ダウン!ページポスト広告成功の秘訣【第3弾:ビズリーチ】
[2]:会員制転職サイト「ビズリーチ」のYahoo! DMP活用 優良会員になりうる潜在層を獲得
[3]:パートナーとしての広告会社――ビズリーチ・電通共同開催セミナー「急成長企業の新時代マーケティング戦略とは」レポート
[4]:ビズリーチが語る、BtoBマーケを成功に導く3つのカギ【テレビCMを出稿する理由も明らかに】
[5]:起業や転職に踏み切る前に--ビズリーチ南氏による“草ベンチャー”の勧め