儲かる農業を目指すには!農業の課題と革新的解決策
農業の後継者不足の理由の一つに、「儲かる農業が見えないから」とよく言われます。
農業の課題は日本の社会的課題でもあり、食料自足率の向上・食料安全保障に繋がります。
また農業の課題は、農業の現状[1]の理解から導かれれますが、農業経営の根幹である労働生産性の向上と高付加価値化が基本的視点です。
是非、この資料の革新的解決策で、儲かる農業実現を検討してください。
目次
Ⅰ.農業課題解決のための労働生産性向上
農家の高齢化や労働力不足、低収益性[1]に対し、機械化や自動化での効率化による労働生産性向上が課題です。
農地集積、自動化、機械化について、農林水産省の政策やスマート農業事業の資料にもとづき説明します。
1.農地集積[2]
(1)「人・農地プラン」の実質化に向けた取組
担い手への農地の集積率については、令和5(2023)年度までに8割に引き上げる目標が設定されています。
このような中で、目標の達成に向けては、「人・農地プラン」の実質化、農地中間管理事業の手続の簡素化と農地の集積・集約化の支援体制の一体化を内容とする改正農地バンク法に基づき、今後は実質化された「人・農地プラン」を核に担い手への農地の集積・集約化を一層加速化させていくこととしています。
(2)人・農地プラン[4]
(3)農地中間管理機構(農地バンク)
地中間管理機構とは、平成26年度に全都道府県に設置された「信頼できる農地の中間的受け皿」です。
農地中間管理機構はこのようなときに活用できます。
・ リタイアするので農地を貸したいとき
・ 利用権を交換して、分散した農地をまとめたいとき
・ 新規就農するので農地を借りたいとき
2.自動化[3]
作業を自動化し農家の作業負担を軽減することで、労働生産性は高まります。
自動運転アシスト機能付コンバイン
○ オペレータが搭乗した状態での自動運転による稲・麦の収穫が 可能に
(株)クボタ
機械名:WRH1200A2
価 格:1,760万円(税込)~
※1 別途、GPSユニット(基地局)が必要
※2 GPSユニット(基地局)は既存のもので代用可
2021年4月 販売開始
自動運転田植機
○ 監視者がほ場周辺にいる状態で、旋回も含めて 自動で田植えを実施
○ ほ場の最外周を有人で走行してほ場マップを生成し、 その後、田植機が走行経路を自動で計算
(株)クボタ
機械名:アグリロボ田植機NW8SA-PF-A
価 格:632万円(税込)~
2020年10月 販売開始
3.ドローンの活用[3]
ドローンと農業は非常に相性がよく、農薬散布をはじめ、肥料散布、播種、受粉、運搬、など作物の種類を問わず活用の幅が広がっています。
ほ場の低層リモートセンシングに基づく可変施肥技術の開発
○ 専用タブレットの操作で、離陸・散布・着陸ま でを自動で行う完全自動飛行
○搭載する専用カメラで、至近距離から作物をセ ンシング
○作物の生育状態を解析し、生育不良の部分に、 ドローンで追肥
株式会社ナイルワークス
機械名:Nile-T20(農業用ドローン)
2020年7月 販売開始
4.IoT[3]
農地の様子を知るに、あらかじめセンサーなどIoT機器でチェックすれば、見回り回数を減らせます。
水田の水管理を遠隔・自動制御化するほ場水管理システム
○水田水位などのセンシングデータをクラ ウドに送り、ユーザーがモバイル端末等で 給水バルブ・落水口を遠隔または自動で 制御するシステムを開発
(株)クボタケミックス
製品名:WATARAS
価 格:自動給水口・落水口兼用 13.2万円(税込) 水位水温計 3.3万円(税込)
基地局 33万円(税込)年間使用料 8,800円(税込) (基地局1台あたり自動給水バルブ1-40台接続時)
2019年4月販売開始
Ⅱ.農業課題解決のための高付加価値化
農業の低収益性[1]に対し、養液栽培、6次産業化、有機栽培による高付加価値化が課題です。
1.養液栽培[3]
養液栽培とは、肥料を土壌ではなく水に溶かした培養液中で作物を育てる栽培方法です。主な養液栽培としては、培養液の中で根が育つ「水耕栽培」と、土の代わりにさまざまな培地を使った「固形培地耕栽培」、そして培養液を霧状にして根に散布する「噴霧耕栽培」があります。
水耕栽培と噴霧耕栽培では、収穫期間が短いレタス・みつば・葉ネギなどの葉菜類の栽培が多く、固形培地耕栽培では主にトマト・イチゴ・きゅうりなどの果菜類が栽培されます。
養液栽培では肥料を水に溶かした培養液を、直接作物の根から吸収させます。必要な水分と養分が常に供給されるため、土耕栽培に比べると作物の生長速度が速く、収穫までの期間を大幅に短縮できるというメリットがあります。
異物混入の危険性もほとんどないので、品質にこだわるホテルやレストランなどに、高付加価値の商品として継続的に納入することも可能です。
作物の生長に合わせ潅水施肥を自動実行する養液土耕システム
・ 各種センサー情報(日射量、土壌水分量、 EC値、地温)を、ゼロアグリクラウドへ集約
・ ゼロアグリクラウド内で、かん水施肥量(液肥 供給量)を割出し、ゼロアグリ本体から自動で 供給し土壌環境制御を行う
(株)ルートレック・ネットワークス
2.6次産業化
6次産業化とは、1次産業を担う農林漁業者が、自ら2次産業である「加工」や3次産業の「販売・サービス」を手掛け、生産物の付加価値を高めて農林漁業者の所得を向上する取り組みを指します。
「6次産業=1次産業(農林漁業)×2次産業(加工)×3次産業(販売・サービス)」と、1次産業にほかの産業を掛け算して6次産業としているわけです。
(1)6次産業化のメリット
・直接販売によって、中間マージン削減や農家が主導的に価格決定できるようになり、利益率が向上します。
・卸売市場の価格変動に収益が左右されず、経営が安定します。
・農閑期に仕事ができ、農作業の平準化ができます。
(2)6次産業化のデメリット
商品開発や設備投資にかかる初期費用のほか、収益化できるまで事業を支える数年分の資金が必要です。
・加工技術やマーケティング、衛生管理などの専門知識やノウハウが必要となるので、栽培にかかるコスト以外の負担も増えていきます。
・販売まで手掛ければ、在庫を抱えるリスクも生じます。
3.有機栽培
有機農業とは、以下の3点を満たして生産する農業を指します。
①化学的に合成された肥料および農薬を使わない。
②遺伝子組換え技術を利用しない。
③環境負荷をできるだけ減らして生産する。
(1)有機農業のメリット
有機JAS認証には厳しい基準をクリアする必要があるため、有機農産物を売り出すこと自体が丁寧な生産の証でもあり、慣行栽培作物との差別化になります。
消費者の関心は高まっており、高い付加価値をつけることも可能です。
(2)有機農業のデメリット
化学肥料・農薬を使わないため、病害虫・雑草対策が難しいです。
手間がかかるわりに、慣行栽培に比べると収量が上がらない傾向があります。
収量や品質を安定させることも難しいです。
まとめ
儲かる農業の実現には、自動化、機械化による労働生産性の向上と、精密農業、6次産業化、有機栽培による高付加価値化が有効です。
それには、日本の環境に適した技術革新[5][6][7]が求められます。
革新的な機械・設備は高価なので、固定費(減価償却費)の増加を抑制する検討が必要です。
出展:
[1]:【徹底解説】日本農業をとりまく外部環境と現状
[2]:第4節 担い手等への農地集積・集約化と農地の確保(農水省)
[3]:ス マ ー ト 農 業 の 展 開 に つ い て2022年8月農林水産省
[4]:人・農地プラン(概要)
[5]:【詳説】ものづくり補助金を使った農業の技術革新事例
[6]:補助金で生産性向上し農業所得の増加・儲かる農業を実現(水田作経営)
[7]:補助金による生産性向上で達成する農業所得の増加(露地野菜作経営)