中小企業DX推進の6ステップ|成功への進め方を分かりやすく解説
DXを進めたいけれど、「何から始めればいいか分からない」と悩む中小企業は多いです。
DXはITツールを入れることではなく、会社のやり方を少しずつ良くしていく取り組みです。
この記事では、中小企業が無理なく実践できる「DX推進の6つのステップ」を分かりやすく解説します。

目次
ステップ1:経営戦略・ビジョンの構想[1]
DXのゴールを明確にすることが、すべての出発点です。
まず「何を変えたいのか」「どのような価値を創出したいのか」を明確化することが重要です。経営層が「我が社はDXによって〇〇を実現する」という明確なビジョンと強い意志を示すことが、全ての出発点となります。
具体的な目的の例:
- 顧客体験や顧客満足度の向上
- 新しいビジネスモデルの構築や新たな価値の創出
- データに基づいた意思決定の迅速化と最適化
これらの目的は、経営目標と紐づけて定義することが重要です。このビジョンは、具体的で測定可能、かつ従業員の共感を得られるものである必要があります。この段階で、組織全体で共通認識を持つことがDX成功への第一歩となります。
ステップ2:体制整備・人材育成[1]
部門を横断した推進体制の構築が、DX成功の土台です。
DXを進めるには、特定の部門だけで進めると「サイロ化」(部門間の情報断絶)を引き起こすリスクがあります。部門横断的な推進体制を構築し、全社最適に向けた取り組みを行うことが不可欠です。
推進体制の主なパターン:
部門横断チーム型
- 各部門から代表者を集めてDX推進チームを構成
- 現場とIT双方の視点を取り入れやすく、全社最適に向けたバランスの良い進め方が可能
- ただし、関係者が多くなるため調整に時間がかかる場合がある
事業部門主導型
- 現場主導でDXを進め、IT部門が支援する体制
- 現場のニーズに即した柔軟な対応が期待できる
- ITの専門知識が不足していると、システムの選定や運用で課題が生じる可能性がある
推進チームの構成例: 経営企画、IT部門、事業部門、人事部門など、部門横断型のメンバーで構成するのが理想的です。各部門の知見を結集し、全社的な視点でDX戦略を立案・実行する役割を担います。必要に応じて、外部の専門家の知見を活用することも有効です。
ステップ3:現状分析・課題抽出
「今の姿(As-Is)」を正確に把握することが、改革の起点です。
自社の現状を客観的に把握し、DXによって目指すべき理想の姿(To-Be)とのギャップを明確にします。2025年版「中小企業白書」[2]によると、2024年時点で「紙や口頭による業務が中心(段階1)」の企業は減少傾向にあり、DXの初期段階(段階2以上)に移行する企業が増加しています。

(1) 業務の棚卸し[1]
現状の業務フローや利用しているITシステム、人員配置、課題を洗い出します。部門ごとのヒアリングや業務プロセスの可視化を通じて、以下を特定します:
- アナログな作業
- 属人化している業務
- ITリテラシーや社内人材のスキルレベル
- DXの目的(業務効率化、売上向上、働き方改革など)
注意点: ツールの選定や社内体制づくりの前に、この現状把握を怠ると、後々の認識のズレや無駄な投資につながるリスクがあります。
(2) 業務プロセスの可視化[3]
実務担当者へのヒアリング等により、対象となる業務を「誰が、いつ、どこで、どうやって、どのくらいの頻度や時間・コストをかけて」行っているのかを明らかにします。
業務プロセス可視化で明らかになること:
- 業務のムダや重複
- 複雑な承認プロセス
- 特定の部署・担当者への業務の偏り
- 業務の属人化(特定の担当者以外が対処できない仕事)
業務プロセスを可視化することで、プロジェクトメンバー間における認識齟齬を防ぎ、全員が同じ方向を向いてプロジェクトを推進することにつながります。
業務プロセス図[4]

(3) 3つの視点での分析[4]
業務プロセスの可視化 どのような業務が、誰によって、どのように行われているのかを詳細にマッピングし、非効率な点やボトルネックとなっている箇所を洗い出します。
既存システムの評価 現在利用しているITシステムの機能、老朽度、データ連携の状況、セキュリティなどを評価します。レガシーシステム(古い技術で構築された基幹システム)がDX推進の妨げになっていないかを確認します。
データ活用の実態把握 どのようなデータがどこに蓄積され、どの程度活用されているのかを調査します。データのサイロ化(部門ごとの孤立)が起きていないかも確認します。
この分析を通じて、「どこにメスを入れるべきか」「何を優先的に解決すべきか」という具体的な課題を明確にします。
業務プロセスの可視化に加え、関連する業務を行う現場社員へのヒアリングを実施し、業務の3M(ムリ・ムダ・ムラ)やボトルネックになっている業務、属人的になっている業務を特定していきます。
業務における問題点が明らかになったら、ステップ①で定めた“モノサシ”を基準にして取り組むべき課題に優先順位を付けます。

(4) 新たな業務プロセスの設計
顕在化された課題のなかで無駄なプロセスを排除し、"あるべき姿"として新たな業務プロセスや業務フローを描きます。
重要なポイント: 必ずしもデジタル・ITを活用することが改善・改革に繋がるのではありません。業務プロセス上の課題とITの課題を適切に切り分けて検討することが重要です。こうした業務プロセスの改善・改革の検討を踏まえた上で、はじめて"デジタル・IT化が望ましい業務"を選定していきます。
(5) システム構成図の作成(必要に応じて)
複雑なシステムを導入する場合は、システム構成図を作成します。システム構成図とは、システムの全体や特定範囲の構成を図で表したものです。
システム構成図のメリット:
- 情報の共有: 関係者同士の「イメージの共有」と「情報の明確化」を後押しする
- 問題発見の効率化: 現在起こっている問題がどこで起きているのかを明確に把握できる
- 拡張性の担保: 将来起こりうる「追加要求」に対して効率的にシステムを拡張できる
<システム構成イメージ>[5]

ステップ4:DX戦略の設計・ロードマップ化[6]
中長期的な視点で、段階的な実行計画を策定します。
業務の棚卸で明らかになった課題をもとに、DXの方向性や戦略を定めていきます。「どの課題にどう取り組むのか」「どのように社内へ広げていくのか」といったロードマップを描くことが中心になります。
(1) DX目標の設定
特定した課題に基づき、具体的な目標を設定します。目標は、定量的に測定可能で達成可能なものにします。
目標設定の例:
- 「受発注業務にかかる時間を20%削減する」
- 「顧客対応のリードタイムを1日短縮する」
- 「業務効率化」「顧客体験向上」「新規事業モデル構築」
(2) 優先順位の設定
棚卸しを通じて浮かび上がった課題や改善点は、どれも重要に見えるかもしれませんが、限られたリソースですべてを一度に解決するのは現実的ではありません。
優先順位を決める2つの軸:
- 効果の大きさ: 改善により業務効率がどれほど上がるのか、顧客満足度や売上に直結するのか
- 実現可能性: 導入の難易度やコスト、関係者の多さ、現場の準備状況など
注意点: 「始めやすさ」だけを基準に優先順位を決めると、全社最適が損なわれる可能性があります。「この取り組みが全体にどう波及するか」「今後の展開にどうつながるか」といった中長期的な視点を持って、バランスよく優先順位を決めることが求められます。
(3) ロードマップの策定
短期(1年)、中期(3年)、長期(5年以上)でのロードマップを策定します。
ロードマップに含めるべき要素:
- 具体的なアクションプラン
- タイムライン
- 予算・リソース配分
- 各施策の実行に必要な人員、時間などのリソース計画
(4) KPIの設定
施策の進捗状況や効果を定量的に測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。
KPI設定の例:
- 生産性向上率(業務時間の削減率、コスト削減額)
- 顧客満足度(NPS: Net Promoter Scoreの向上)
- 売上向上(DX施策による新規顧客獲得数、売上成長率)
(5) スモールスタートの推奨
いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、小さな課題から解決するスモールスタートを推奨します。これにより、投資リスクを抑え、成功体験を積み重ねることができます。
スモールスタートの例:
- まずは経理部門でクラウド会計を導入する
- 営業部門で顧客管理システム(CRM)の一部機能を試す
- 特定の部署や業務プロセスに絞って小さく始め、成果を見ながら段階的に広げる
スモールスタートの注意点: 部門単位で個別にDXを進めた結果、ツールやシステムがバラバラに導入され、部門間での情報連携が難しくなる「サイロ化」が起こることもあります。初期段階から「全社最適」を視野に入れつつ進めることが大切です。
ステップ5:IT・デジタル技術の導入
課題に合った選定と、導入後の活用まで見据えた設計が鍵です。
社内体制が整い、ロードマップが策定されたら、いよいよ具体的なツールやシステムの導入に着手します。
選定時の重要ポイント
課題に合った選定:
- 自社の業務にフィットしているか
- 現場が使いやすいか
- 既存システムとの連携が取れるか
- 実運用を意識した選定基準
コスト・承認プロセスの考慮:
- 初期費用や運用コスト
- 社内の稟議、関係部門との調整
- 計画的に進めるための段取り
ベンダー選定: 信頼できるITベンダーやパートナー企業の選定も成否を左右します。製品の性能だけでなく、サポート体制や自社との相性、将来の拡張性なども含めて、総合的に判断することが求められます。
導入の進め方: ITツール、業務システム、データ活用基盤等の段階的な導入がおすすめです。一度にすべてを導入するのではなく、優先順位に基づいて段階的に進めることで、リスクを最小限に抑えることができます。
ステップ6:成果検証と継続改善(PDCAサイクル)
DXは一度やって終わりではありません。
ツールの導入後も、定期的に設定した目標に対する効果を測定し、継続的に改善を行います。これにより、DXの取り組みが形骸化するのを防ぎ、常に最適な状態を保つことができます。
(1) 効果測定の実施[1]
ITツールを導入した後は、その施策がどれだけ効果を上げているかを測定する必要があります。目的に応じた指標を設定しておきましょう。
効果測定の指標例:
- 業務時間の削減率
- コスト削減率
- 顧客満足度
- 新規顧客獲得数
- 売上成長率
効果測定の重要性: 効果測定を行わないまま進めると、「結局何が良くなったのか分からない」という事態に陥ります。数値で示せる成果であれば、社内への説明もしやすくなり、今後の施策に対する投資判断にも良い影響を与えます。
測定のタイミング例: 導入後3ヶ月で受発注業務の時間が目標通り削減されたかを確認し、課題があれば改善策を検討します。
(2) PDCAサイクルの実践
社会や顧客ニーズの変化に合わせて、業務やシステムも柔軟に変化させていく必要があります。そのためには、実行後の効果を分析し改善策を立て、再び計画・実行する「PDCAサイクル」を継続的に回す体制が不可欠です。
PDCAサイクルの4つのステップ:
- 計画(Plan): 改善策を立案する
- 実行(Do): 計画に基づいて実行する
- 評価(Check): KPIで成果を測定し、課題を特定する
- 改善(Act): 評価結果をもとに改善策を実施する
PDCAを回すための具体的な取り組み:
- 成功事例や失敗事例を社内で共有し、DXの知見を蓄積
- 最新技術や市場動向をキャッチアップし、継続的な改善を図る
- 現場からのフィードバックを積極的に取り入れる
このサイクルを通じて、改善点を洗い出し、より効果的な施策を立案・実行していくことが、真のDXにつながります。また、現場からのフィードバックを積極的に取り入れることで、現実的かつ現場に根ざした改善が進みやすくなります。
これら6つのステップは連続しており、それぞれが前のステップの成果を基盤としています。 焦らず、一つひとつのステップを着実に進めることが、DX成功への最短ルートです。特に、ステップ3(現状分析)とステップ6(PDCA)を丁寧に行うことが、中小企業のDX成功率を大きく高めます。
まとめ
DXは一度で完成するものではなく、少しずつ続けることが大切です。
6つのステップを順番に進めることで、失敗のリスクを減らせます。
まずは自社の現状を知ることから始め、できるところからDXに取り組んでみましょう。
DXの進め方に不安がある場合は、専門家に相談するのも有効です。
自社に合ったDXを、一歩ずつ進めていきましょう。
出展:
[1]:DXの進め方と推進方法。具体的な手順と導入までわかりやすく解説
[2]:2025年版「中小企業白書」
[3]:業務改善・業務改革の実現に「現状分析」や「問題点の洗い出し」が重要な理由
[4]:DXで重要な「課題発見・解決能力」とは?
[5]:社内稟議作成に直結する!社内システムとの連携システム構成ガイド
[6]:DX推進とは?企業が成功するための進め方・課題・解決策を徹底解説

