【成功事例】業種・飲食業の起業事例にみる起業成功の秘訣(前編)
飲食業で起業したい気持ちはあるけれど、課題が多くて難しそう...と、まずスタートの時点で止まっていませんか?
飲食業の起業で最も重要なのは、ビジネスモデルと料理、集客です。
今回は、カフェ、ミュージックバー、フランス料理店、うどん店、中華料理屋、宅配ピザ屋
の事例について、起業までの経過、起業当時の苦労、マーケティング戦略、起業成功の秘訣
についてご紹介します。
この記事を読むことで、飲食業起業でのビジネスモデル、料理、集客等のポイントが確認できます。
目次
1.自家製ランチとスイーツが美味しい東京向島の古民家カフェ こぐま
(1)古民家カフェ こぐま(業種:飲食業)の会社概要[1]
会社名: 古民家カフェ こぐま
住所: 東京都墨田区東向島1丁目23−14
事業内容:カフェ
起業者: 山中正哉・山中明子(山中)
創業日: 2006年11月
席数:14席(テーブル席)
(2)古民家カフェ こぐま(業種:飲食業)起業までの経緯[2]
(山中)以前は三鷹周辺に住んでいたのですが、アート関連のプロジェクトで向島に通っていた時期があったんです。
というのも、もともとは夫とふたりで劇団をやっていまして、実際に街歩きをしながらリサーチして、その街や場所からイメージしたお芝居をつくり、リノベされた物件やオルタナティブなスペースで上演するようなことをやっていたんです。
そんななかで向島が面白いと聞いて、3年くらいそういった活動をしていたのですが、ここに住んで何かしらやってみたいという思いが強くなって。
(3)古民家カフェ こぐま(業種:飲食業)起業当時の苦労[2]
オープン当初はギャラリーカフェ的なイメージもあったため、壁面スペースを貸し出して、2週間ごとに展示物を入れ替えていた。
しかしながら週末などは特に展示目的に来た人で混み合い、カフェ利用をしたい人が入れなくなる状況に陥ってしまったそう。
いいとこ取りはできないことがわかり、カフェとしての機能を充実させようと決めてからは、メニュー自体も変えていった。
(山中)最初の頃は中国茶を出して、お茶請けをちょこっと出すようなお店だったんです。
ケーキも焼けないし、何もつくれなかったのも大きいのですが(笑)。
今考えると、オープンのお祝いに来てくださった商店街の方々は、明らかに失望されていましたね。
そのうちランチできる場所があったらいいよねとか、コーヒーだけじゃなく手作りの甘いものを食べられたらいいよねという声が聞こえてくるようになり、フードの勉強をしながらメニューを充実させていきました。
(4)古民家カフェ こぐま(業種:飲食業)のマーケティング戦略
店内[1]
こぐまは1927年築の薬局をリノベーションした古民家カフェです。
店内の棚は昔使われていた薬棚。薬の引き出しや柱時計、ミシン等……この家に古くからあったモノたちをそのまま活かしています。
顧客[2]
(山中)オープン当時(2006年)はカフェブームだったので、まずカフェファンのお客様がいらっしゃって、2012年に東京スカイツリーができてからは、全国から観光でいらっしゃった方も来るようになりました。
その頃はテレビの取材も多かったので、番組を見て地元の方がようやく来てくださるようになり、だんだん常連さんが増えてきたのですが、そうなるまでには10年以上かかったと思います。
東日本大震災が起きたとき、観光客が一斉にいなくなってなかなか戻ってこなかったのですが、そのとき地元のお客様の大切さをしみじみ感じました。
もちろん以前から地元の方にもっと活用していただきたいと思っていたのですが、やはりこの層があってこその観光の方なのだとそのとき実感しました。
メニュー[1]
LUNCH MENU
すみだブランド認証を受けたオリジナルフード「焼きオムライス」や、自家製カレーをベースにした「焼きカレー」がとても人気です。
他にも中からチーズがとろりとろけるハンバーグや、自家製タレが決め手のポークジンジャー丼、特製ひよこ豆のカレーをご用意しています。
「焼きオムライス」は、ケチャップライスの懐かしい味わいと、オーブンでオムライスを焼く斬新さが人気。
CAFE MENU
自家製ケーキはレアチーズ、シフォン、チョコレートタルトの3種類。どれも丁寧に手作りしています。
和スイーツ「あんみつ玉」は、すみだブランド認証を受けた個性派あんみつです。
プロモーション[1]
2006年開店以来「悠々散歩」「ヒルナンデス」「王様のブランチ」 「スーパーJチャンネル」「アド街っく天国」「J-WAVE」 「TOKYOウォーカー」「散歩の達人」「ブルータス」 「AERA」「読売新聞」「オズマガジン」など たくさんのテレビ、新聞、雑誌に掲載されています。
地域とのコミュニケーション[2]
山中正哉さんは昨年から、商店街振興組合の副理事長に。
イラストやデザインなどの特技を生かして、お店のロゴマークやショップカードをつくっていたが、最近は商店街のグッズ制作も担当している。
(5)古民家カフェ こぐま(業種:飲食業)起業成功の秘訣
薬局をリノベーションした古民家カフェ
下町向島の風情にマッチした古民家カフェは、マスコミに取り上げられた。
プロモーション効果が高く、カフェファンや東京スカイツリー観光客の集客に繋がっています。
看板メニューの創作
すみだブランド認証を受けたオリジナルフード「焼きオムライス」「あんみつ玉」の看板メニューを創作。
古民家風カフェと相まって話題性が高く、SNS等の口コミも生み新規顧客の増加に貢献しています。
2.ゆったり居心地が良い渋谷のDJブース付きミュージックバー:music bar 45[3]
(1)music bar 45(業種:飲食業)の会社概要
会社名: music bar 45
住所: 東京都渋谷区桜丘町17-10 吉野ビル2階
事業内容: 音楽バー
起業者: 髙橋良明
創業日: 2015年5月
総席数:20席
(2)music bar 45(業種:飲食業)起業までの経緯
音楽業界で会社員として20年以上のキャ リアを髙橋氏は積み重ねた。
腕を磨いてから独立しようとそれまで行 き来していたバーで独立を前提としてアル バイトを始めた髙橋氏。
修行する店舗選び については、「独立したいという志に理解が あり、経営の基礎を学ぶことができる」とい う軸を持っていたと振り返った。
「先輩スタッ フが経営者のビジョンを分かり易く伝えて いた」と期せずしてお店づくりのポイントを 会得した。
「脱サラ」で飲食業をしたいということを 髙橋氏が行きつけのロックバーのオーナー に相談したところ、偶然、同オーナーが店舗 の「移転」を考えていた時期に当たったので ある。
同オーナーから「次のお店にそのまま 持っていけないものは、引き継いでもらえれ ば」と提案を受け、思いがけず、「居抜きという 形」で渋谷駅徒歩5分という好立地の物件を 契約できる運びとなった。
(4)music bar 45(業種:飲食業)のマーケティング戦略
店内
バーカウンターについて「新しい木材では 演出できない良い雰囲気があります」と歴史 ある店舗を引き継いだからこそ醸し出せる内の雰囲気について髙橋氏は誇らしげに語っ た。
店内 は長めのカウンターとフロアテーブルからな り、一人客でもグループでも利用し易い店内 構成になっている。
顧客
渋谷駅から徒歩5分という立地柄、「毎日 1組以上、また年間で2~3割は飛び込み客で す」と髙橋氏。
その他、イベントを目的とし た顧客に加えて「外国人が2~3割はいます」 と髙橋氏は語る。
「オーストラリア、アジア の方が多いです」と訪日客のニーズがある ことにも触れた。「日本酒やジャパニーズウ イスキーなど国産のお酒が飲める」というメ ニュー構成は、外国人に「楽しんでもらう要 素になっています」と髙橋氏は微笑んだ。
サービス
ジャンルやカテゴリーにとらわれない気 軽に入店できる音楽バーとしてアナログレ コードやCDをディスクジョッキーが演奏す るDJブース付きで、随時イベントも実施中 である。
「ゆったり、居心地の良いこと」をコ ンセプトとしていることから「ジャンルの縛り を設けない」と髙橋氏。
「前職での経験」が 飲食業のバーという業態で「いろんな形で 生きてくる」と髙橋氏。
かつて音楽業界に携 わっていたことから「時代のムーブメントやト レンドをウォッチしてきた自負はあります」と 髙橋氏は力強く語る。
業界での経験や人脈 を活かして特徴ある企画を開催している。
(5)music bar 45(業種:飲食業)起業成功の秘訣
業界での経験や人脈 を店舗運営に生かした
勤務していた音楽業界の知人や学生時代の友など人とのつながりによる集客。
音楽業界での経験や人脈 を活かして特徴ある企画。
これらの音楽業界の専門性を生かした個性的な経営で、顧客満足度を高めています。
好立地の居抜き物件
居抜きで渋谷駅徒歩5分のロックバーを引き継げ、雰囲気のある店舗を安い改修費用で構築。
起業に際し初期投資が抑えられ、経営の安定化に寄与しています。
3.本場フランス仕込み料理の古民家フレンチ:人形町 伊勢利
(1)人形町 伊勢利(業種:飲食業)の会社概要[4]
会社名: 人形町 伊勢利
住所: 東京都中央区日本橋人形町2-6-10
事業内容: 飲食店(ビストロフレンチ)
起業者: 増川 夏実(店主)
創業日: 2015年9月
席数:20席
利酒師の資格を持つ店主 の増川氏が、本場のフランスで 修行をした経験を持つ夫と創り 出すおもてなしと料理が特徴 のお店です。
(2)人形町 伊勢利(業種:飲食業)起業までの経緯[4]
もともと『和の文化』に興味があり、その ビジネスプランを考えたが、ビジネスモデル として成り立つものではなく、どちらかとい うとボランティアに近い事業計画であった。
増川氏は自分がしたいことだけを掘り 下げるよりも、何ができるのかを考えること の大切さに気がついた。その結果、増川氏 が選んだのは飲食店だった。
夫が本場のフ レンチで修行をしていた経験もあり、自分た ちができることを活かせるようにプランを固 めていった。
家賃の相場などを考慮し、どこに出店する かを絞っていった。物件探しに半年以上か かると聞いていたが、運良く探し始めてから それほど経たないうちに、不動産屋の担当 者から紹介があり、現在の店舗を見つけるこ とができた。
居抜き物件でなく想定よりや や広く2階建ての物件であったため、当初考 えていた夫婦二人でお店を営業することは できなくなったが、契約してもいいと思える 店舗物件だった。
(3)人形町 伊勢利(業種:飲食業)起業当時の苦労[4]
料理やメニュー、そして内装な どの準備はしてきたものの、店舗そのもの を実際に使ってみてからわかることや更な る準備が必要だったことなどが浮き彫りに なっていく。
例えば、開店してからでないとわから なかったことの一つに、レジとして使うオン ラインサービスのアプリ使用がうまくでき なかったなど、会計でのトラブルがあった。
そして、ついに開業。
オープン当初から頭 を悩ませていたのは、宣伝をどうやって行う かという課題だった。SN Sの活用などを試行錯誤で行ってみたが、そ れほど効果が上がらなかった。
開店後、近隣の店よりも夜遅くまで営業し てみたが、街全体から人がいなくなるのが 他の繁華街に比べて早いことから、あまり集 客にはつながらず、近隣のお店と営業時間 も合わせるようになった。
また、開店一年後 にはランチの営業も行ってみたが、ランチを 10人に提供するよりも、夜の営業時に1組の お客様を増やすほうが利益が出た。
(4)人形町 伊勢利(業種:飲食業)のマーケティング戦略[5]
店内
築80年以上の古民家に新たな息吹を吹き込んだこだわりの空間 古民家の面影を残す建物はまさに大人の隠れ家。
老舗足袋店を改装した趣のある佇まいを残して、フランス料理店へと生まれ変わりました。
人形町駅から徒歩1分という立地も魅力です。
店内はシェフが調理する様子を間近で見ることが出来るカウンター席や、大切な接待や記念日などのお祝い事にも最適なテーブル席もございます。
メニュー
【メインはA5和牛 シェフお任せコース】
前菜2品、お魚料理、A5和牛、デザートなど全6品
【伊勢利フルコース】
前菜2品、お魚料理、選べるお肉料理、デザートなど全6品
プロモーション
ふと、人形町の近隣地区へと視線を向ける。
木造の建築物 も多く残り、落ち着いた街並み。訪れる人 も若者というよりも年配の人々が多かった。
宣伝する媒体はSNSではないのかもしれな い。そう考え、雑誌や地元のフリーペーパー などを積極的に活用することにした。特に 地元のフリーペーパーは、近隣の人が見て くれることから、大きな効果があった。
また、国内の高級旅館や高級レストランを 紹介する審査制Webサイトに取り上げられ たことから、そのサイトからの予約が増え、 人形町で軽い接待や、ちょっとした記念日に 気軽に使えるお店として認知が広まったよう に感じている。
また、季刊雑誌にも掲載され るとともに、口コミでフレンチを食べにくる お客が増えた。
(5)人形町 伊勢利(業種:飲食業)起業成功の秘訣
こだわりの店舗
築80年以上の古民家の雰囲気のある店内。
利酒師の資格を持つ店主と、本場のフランスで 修行をした経験を持つ夫が創り 出すおもてなしと料理。
このこだわりの店舗が、審査制Webサイトや季刊雑誌にも取り上げられ集客効果を増しています。
地道なプロモーション
地元のフリーペーパーは、近隣の人が見て くれることから、大きな効果があった。
さらに、口コミでフレンチを食べにくる お客が増えた。
地道なプロモーションが確実な宣伝効果を生み、新規顧客の獲得とリピーターの維持に繋がっています。
出展
[1]:古民家カフェ こぐまHP
[2]:10年以上続けてきたから今がある。「古民家カフェこぐま」山中明子さん【インタビュー:東京R不動産】
[3]:2019年度創業事例集(東京商工会議所)
[4]:2018年度創業事例集(東京商工会議所)
[5]:人形町 伊勢利HP