【2024年版】中小企業の融資に有効な中小企業施策

2024年6月7日に中小企業庁等より、「今後の中小企業向け資金繰り支援」「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について」が公表されました。
政策の重点が資金繰りから経営改善へと変わったため、中小企業は自ら資金繰りを改善することが求められます。
本記事では、2024年7月以降の融資申請に利用できる中小企業施策について解説します。

目次

Ⅰ.中小企業施策の方針  

2024年6月7日に公表された重要な中小企業施策、「今後の中小企業向け資金繰り支援」「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について」について方針を整理します。

1.今後の中小企業向け資金繰り支援[1]

経済産業省は、2024年6月7日、今後の中小企業向け資金繰り支援について公表するとともに、関係省庁とともに、官民金融機関等に対しコロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等を要請しました。

(1)コロナ資金繰り支援

「コロナセーフティネット保証4号」・「コロナ借換保証」は、本年(2024年)6月末で終了。小規模事業者に対 しては、コロナ前から措置している「小口零細企業保証」(100%保証)を活用し、借換等を支援します。

(2)コロナ禍からの経営改善・再生を図るための資金繰り支援

「コロナ経営改善サポート保証」・「コロナ資本性劣後ローン」は、本年12月末まで延長。関係機関による支援も強化(信用保証協会向けの改正監督指針の運用開始 等)します。

(3)円安等に伴う資材費等の価格高騰対策

資材費等の価格高騰対策として実施している日本公庫等の「セーフティネット貸付(利益率 ▲5%→金利▲0.4%)」は、本年12月末まで継続します。

2.コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について[2]

コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進み、本年(2024年)4月には民間金融機関による実質無利子・無担保融資の返済開始の最後のピークを迎えた中、コロナ禍から続く資金繰り支援については、現在大きな転換点を迎えています。

本年(2024年)3月8日に公表した「再生支援の総合的対策」において既に方向性を示した通り、7月以降は、能登半島地震の被災地に配慮しつつ、各種資金繰り支援策についてはコロナ前の水準に戻し、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援とします。

(1)コロナ資金繰り支援策の転換

①民間金融機関

ア.コロナ融資の返済が厳しい事業者については、コロナ借換保証制度は原則終了するものの、例えば、100%保証を100%保証で借換可能とする小口零細企業保証や、認定経営革新等支援機関(金融機関等)の支援を条件に保証料を低減する経営力強化保証(80%保証)等を活用し、コロナ融資の借換等を通じて、資金繰り支援を行うこと。

イ.民間金融機関(コロナ資本性劣後ローン) コロナ資本性劣後ローンを活用した支援について前向きに検討すること。その際、民間金融機関による実質無利子・無担保融資等からの借換促進も念頭に、日本政策金融公庫等とも連携し、協調融資商品の組成拡大等に努めること。

ウ.民間金融機関においては、本年(2024年)2月より時限的に対象に追加された「早期経営改善計画策定支援事業」等の各種支援施策も活用しつつ、事業者が抱える課題解決に向けたコンサルティング機能を発揮し、経営改善・再生支援に努めること。

②日本政策金融公庫等

ア.新型コロナウイルス感染症特別貸付等
一般的な災害貸付金利を適用のうえ、本年12月末まで延長する新型コロナウイルス感染症特別貸付等において、引き続き、資金繰りに課題を抱える事業者のニーズを踏まえた対応を行うこと。
また、新型コロナウイルス感染症特別貸付等を今後適用する際には、社会経済活動の正常化が進む中、改めて、コロナの影響や、中長期的な事業者の業況の回復や発展の見込みを確認し、適切に判断すること。
なお、事業者の利用実績等を踏まえ、新型コロナウイルス感染症特別貸付等について、新規の設備資金融資を今般対象外とすることから、今後、設備資金融資のニーズに対しては、引き続き措置されている他の貸付制度を活用し対応すること。
また、円安等に伴う資材費等の価格高騰等の経済環境を踏まえ、金利引下げ措置が本年12月末まで延長されたセーフティネット貸付(原材料価格高騰対策)等の活用を促進すること。

イ.コロナ資本性劣後ローン
小規模事業者も含め、引き続きコロナ資本性劣後ローンの利用促進に取り組むこと。 また、過大な債務等に苦しむ事業者の財務基盤を強化し経営改善を促す観点からコロナ資本性劣後ローンが重要であることに鑑み、借換え等の相談に柔軟に応じるとともに、その中で支援を必要とする先について、時機を逸することがないよう関係機関とも連携しながら経営改善支援に取り組むこと。

表:コロナ資金繰り支援策の転換

Ⅱコロナ資金繰り支援

コロナ資金繰り支援
コロナ資金繰り支援

「今後の中小企業向け資金繰り支援」「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について」に記載された、コロナ資金繰り支援策を整理します。

1.新型コロナウイルス感染症特別貸付

(1)コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について

令和6年(2024年)6月7日公表の「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について」に、以下が記載されています。

①本年(2024年)12月末まで延長
②引き続き、資金繰りに課題を抱える事業者のニーズを踏まえた対応を行うこと。
③新型コロナウイルス感染症特別貸付等を今後適用する際には、コロナの影響や、中長期的な事業者の業況の回復や発展の見込みを確認し、適切に判断すること。
④新規の設備資金融資を今般対象外とすることから、今後、設備資金融資のニーズに対しては、引き続き措置されている他の貸付制度を活用し対応すること。

(2)新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要[3]

表:新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要(日本政策金融公庫・国民生活事業)

(注1)一定の要件を満たす必要があります。要件の詳細は、お近くの支店にお問い合わせください。
(注2)令和6年7月1日(月)のお申込受付分から、融資後3年間の0.5%利率引下げおよび設備資金のお取扱いが廃止となりました。
ご返済期間などによって異なる利率が適用されます。
(注3)経営状況等から借入返済が可能と見込まれる法人の方であって次の(1)および(2)の要件を満たす場合は、経営者の保証を免除することができます。
(1)法人と代表者の方の一体性の解消が一定程度図られていることについて、公庫において確認ができること。
(2)令和2年1月29日時点における直近の決算期からお申込時点における直近の決算期までの間のいずれかの決算期において、債務超過となっていないこと。

Ⅲ.コロナ禍の影響に苦しむ事業者への再生支援

「今後の中小企業向け資金繰り支援」「コロナ資金繰り支援策の転換補助金獲得支援を踏まえた事業者支援の徹底等について」に記載された、コロナ禍の影響に苦しむ事業者への再生支援策を整理します。

1.経営改善サポート保証制度(コロナ対応)[4]

コロナ禍等で多くの借入を行ったものの売上高等が改善しない中小企業者にあっては、必要に応じて、早期に事業再生の取組を進める必要があります。

こうした取組みを後押しするため、経営サポート会議*1や中小企業活性化協議会*2等の支援により作成した再生計画等に基づき、中小企業者が事業再生を実行するために必要な資金の借入を保証する「経営改善サポート保証制度」について、据置期間を最大5年に緩和したうえで、信用保証料の事業者負担を大幅に引き下げる措置を2021年4月1日より開始しております。

今後、コロナの影響の長期化や物価高等の影響で債務を抱え、特に経営状況の苦しい中小企業者の利用ニーズの増加が想定されることを踏まえ、「認定経営革新等支援機関が経営改善計画策定支援事業によって策定を支援した事業再生計画」においても全債権者の合意を得たものであれば対象とするよう要件を拡充いたします。

(1)経営改善サポート保証(コロナ対応)の制度概要[5]

感染症対応型ではない通常の経営改善サポート保証についても上記計画が対象に追加されます。

(2)経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援[6]

①経営改善サポート保証は、経営サポート会議*1や経営改善計画策定支援事業(405事業)*3等により作成した経営改善・再生計画に基づき、中小企業者が経営改善・事業再生を実行するために必要な資金を保証付融資で支援し、経営改善・事業再生の取組を後押しする制度。

②経営改善サポート保証(コロナ対応)については、保証料率0.2%(国による補助)、据置最大5年と新型コロナの影響を受け、より経営状況が厳しい事業者向けに用意している。

*1経営サポート会議:金融機関等の関係者により個々の事業者を支援する信用保証協会等を事務局とした支援の枠組み
*2中小企業活性化協議会:中小企業の財務的安定のための収益力改善をはじめ、借入金返済等の課題を抱えた中小企業の経営再建に向けた取り組みを支援する、国が設置する公正中立な機関
*3経営改善計画策定支援事業(405事業):金融支援を伴う本格的な経営改善の取組みが必要な中小企業・小規模事業を対象として、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取組み

2.コロナ資本性劣後ローン(新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付)

コロナ資本性劣後ローンは日本政策金融公庫などが取り扱っている、期限一括返済型の制度融資です。
コロナ禍の影響を受けて借入が増えた中小企業向けに創設されましたが取り扱い期限は2024年12月31日となっています。

  • 「資本性」とは資本とみなすことができる資金の融資のことです。一般的に融資は「借入金として負債」になりますが、この資本性劣後ローンは「負債ではなく、資本(資本金と同じイメージ)」とみなされます。
  • 「劣後ローン」とは他の債権より支払順位が劣るローンです。つまり、融資額の返済について少し優遇されている制度となります。劣後とは後回しという意味です。返済は毎月分割返済ではなく、借入期間終了時に一括返済となります。

資本性劣後ローンの正式名称は「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付」です。概要は以下のとおりです。

(1)資本性劣後ローンの概要[7]

表:資本性劣後ローンの概要(日本政策金融公庫・国民生活事業)

注1)J-Startupプログラムに選定された企業は、J-Startupホームページから確認できます。
(注2)主に「起業支援ファンド」、「中小企業成長支援ファンド」に分類される投資ファンドをいいます。「起業支援ファンド」または「中小企業成長支援ファンド」に分類されるファンドであるかについては、中小企業基盤整備機構「出資ファンド検索システム」からご確認いただけます。検索の結果、対象になるか不明な場合は、お近くの支店へお問い合わせください。
(注3)「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール支援」または「再生計画策定支援」を受けている方に限ります。
(注4)主に「中小企業再生ファンド」に分類される投資ファンドをいいます。「中小企業再生ファンド」に分類されるファンドであるかについては、中小企業基盤整備機構「出資ファンド検索システム」からご確認いただけます。検索の結果、対象になるか不明な場合は、お近くの支店へお問い合わせください。
(注5)中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資または融資を受けた方をいいます。
(注6)原則として、ご融資後おおむね1年以内に民間金融機関等からの出資または融資による資金調達が見込まれることをいいます。
(注7)民間金融機関等からの協調支援を希望しない方等である場合には、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて事業計画を策定する方が対象となります。
(注8)民間金融機関等からの支援を受けている場合には、事前に当該金融機関等にもご相談ください。
(注9)ご融資金の一部を期限前返済いただくことも可能です。

(2)資本性ローンによるメリット[8]

①資金繰りが改善される

資本性ローンで借入を行うことにより資金繰りが改善されます。また、長期の「期日一括返済」が基本となるため、毎月の返済も発生せず借入後の資金繰りも楽になります。

②金融機関から新規融資が受けやすくなる

「資本性ローン」は金融検査上、自己資本とみなすことができるため、財務内容が改善され(債務超過⇒資産超過)、新規融資が受けやすくなります。

(3)「原則的には」民間金融機関の協調融資が必要

コロナ資本性劣後ローンを活用するほとんどの事業者は、「ご利用いただける方の3の要件で利用することになります。
ここで言う「民間金融機関等による支援を受けられる」とは、「原則として、コロナ資本性劣後ローンの融資後おおむね1年以内に民間金融機関等からの出資または融資による資金調達が見込まれること」です。
民間金融機関の協調融資を受けられないと、一部の例外を除き、コロナ資本性劣後ローンを借りることができません。

(4)金融機関の協調融資なしにコロナ資本性劣後ローンを借りる方法

その一部の例外が、「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて事業計画を策定する」ということです。
協調融資してくれそうな金融機関がなくても、認定支援機関の支援を受けて事業計画を策定すれば、コロナ資本性劣後ローンに申し込むことができます。

(5)資本性劣後ローン申し込み時の費用に補助金が使えるようになった

認定支援機関の支援を受けて事業計画を策定すると、認定支援機関に支払う費用が必要です。
財務内容が悪化している事業者にはその費用の工面が難しく、コロナ資本性劣後ローンの活用につながりにくかったのが実情です。
しかし今回の中小企業庁のリリースで、「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて、コロナ資本性劣後ローンに申込む際に必要な事業計画を策定する場合、早期経営改善計画策定支援事業(ポスコロ事業)による補助金が利用できることになったのです。

Ⅳ.円安等に伴う資材費等の価格高騰対策

「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について」に記載された、円安等に伴う資材費等の価格高騰対策を整理します。

1.経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)[9]

円安等に伴う物価高騰の対策として、日本政策金融公庫がおこなっているセーフティネット貸付は2024年12月まで継続されます。正式名称は、経営環境変化対応資金です。
経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)の概要は以下のとおりです。

(1)経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)の概要

表:経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)の概要(日本政策金融公庫・国民生活事業)

・お使いみち、ご返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。
・利率は金融情勢によって変動いたしますので、お借入金利(固定)は、記載されている利率とは異なる場合がございます

Ⅴ.その他の中小企業施策

「今後の中小企業向け資金繰り支援」「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について」で記載された施策や、その他中小企業向け融資に活用できる制度を整理します。

1.日本政策金融公庫

(1)企業活力強化資金[10]

「企業活力強化資金(企業活力強化貸付)」のご融資を通じて、合理化等のための設備投資を行うみなさまのお手伝いをさせていただいております。

表:企業活力強化資金の概要(日本政策金融公庫・国民生活事業)

(注1)中心市街地の活性化に関する法律第15条第1項各号に定めるまちづくり会社等または同法第42条第4項に定める民間中心市街地商業活性化事業計画の認定を受けた方に限ります。
(注2)「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて、「パートナーシップ構築宣言」を登録・公表している方をいいます。
(注3)中心市街地関連地域につきましては、お近くの支店へお問い合わせください。
お使いみち、ご返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。
・利率は金融情勢によって変動いたしますので、お借入金利(固定)は、記載されている利率とは異なる場合がございます。
・審査の結果、お客さまのご希望に沿えないことがございます。

(2)挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)[11]

「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」の資金供給を通じて、スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む方の財務体質強化や、ベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援しております。

①挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)の概要

表:挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)(日本政策金融公庫・国民生活事業)

(注1)次のいずれかに限ります(※)。
・技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
・日本ベンチャーキャピタル協会の会員(賛助会員を除く。)等または中小企業基盤整備機構もしくは産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けている方(見込まれる方を含む。)
・新規性および成長性がみられる事業を行う方
(注2)海外直接投資(転貸資金を除く)を行う方に限ります。
(注3)中小企業経営承継円滑化法第12条第1項第1号の規定に基づき認定を受けた中小企業者(同項第1号イに該当する方に限る)の代表者および同法第12条第1項3号の規定に基づき認定を受けた事業を営んでいない個人並びに安定的な経営権の確保等により、事業の承継・集約を行う方が事業を承継・集約される方に対して行う転貸資金を除きます。
(注4)次のすべてに該当する方については、ご融資後3年間の利率は0.50%となります(※)。
・民間金融機関からの支援を受けて事業計画書を策定されていること
・事業計画上必要となる資金から自己資金による調達額を控除した額のうち、事業計画書の策定支援を実施した民間金融機関(以下「支援金融機関」といいます。)によるご融資額が、原則として2分の1超となっていること
・ご融資後3年間、支援金融機関に対して事業計画書の進捗状況を報告するとともに、支援金融機関からの経営指導を受けられること

②資本性ローンの特徴

・特徴1 期限一括返済
最終回の一括払いとなり、それまでの間は、利息のみの支払となります。そのため、ご融資期間中は元金の返済負担がなく、月々の資金操り負担を軽減することができます。

・特徴2 業績に応じた金利設定
業績が低調なときは、金利負担が小さい設定となっています。そのため、安定的な返済計画を立てることができます。

・特徴3 疑似出資
資本性ローンによる借入金は、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができます。そのため、財務体質を強化することができます。また、資本性資金でありながら、株式ではないため、既存株主の持株比率を低下させることもありません。

借入金ではなく、自己資本としてみなせる額は次のとおりです。
・償還期限まで、5年以上有する債務については、残高の100%をみなし自己資本とします。
・残存期間が5年未満となった債務については、1年ごとに20%ずつみなし自己資本の割合が逓減します。

2.信用保証協会

(1)小口零細企業保証[12]

民間ゼロゼロ融資の受け皿となるのは、「小口零細企業保証制度」です。
小口零細企業保証は、コロナ前からある制度です。小規模事業者が本制度を利用すれば、100%保証のコロナ融資は100%保証で借換が可能になります。
また小口零細企業保証制度利用にあたり、多くの自治体で保証料補助を実施しています。

①保証限度額は2,000万円

コロナ借換保証制度*1の保証限度額は、1億円でしたが、小口零細企業保証制度の保証限度額は2,000万円と1/5の額です。
コロナ融資の残高が2,000万円以上ある事業者は利用できません。
*1:コロナ借換保証は2023年1月10日から開始し、2024年6月末で終了

②据置期間は1年以内

コロナ借換保証の据置期間は5年以内となっていましたが、小口零細企業保証制度の据置期間は1年以内。こちらも1/5となっています。

③100%のコロナ保証制度でないと借換えできない

100%のコロナ保証の借換のみとなります。
セーフティネット5号を利用してコロナ融資を借りている場合は、信用保証協会の保証割合が80%になっているため、小口零細企業保証制度を利用しての借換は基本的にはできません。

表:コロナ借換保証制度と小口零細企業保証制度の比較[13][14]

*2:要件の詳細
1.セーフティネット4号の認定(売上高が20%以上減少していること。最近1ヵ月間の実績とその後2ヶ月間の見込みと前年同期の比較)
2.セーフティネット5号の認定(指定業種であり、売上高が5%以上減少していること。最近3ヵ月間の実績と前年同期の比較)
※1.2.について、コロナの影響を受けた事業者は、前年同期ではなくコロナの影響を受ける前との比較でも可
3.売上高が5%以上減少していること(最近1ヵ月間実績と前年同月の比較)
売上高総利益率/営業利益率が5%以上減少していること(3.の方法による比較に加え、直近2年分の決算書比較でも可)

(2)経営力強化保証[15]

①経営力強化保証制度とは

中小企業者の資金調達にあたって、金融機関が認定経営革新等支援機関と連携して中小企業者の事業計画の策定支援や継続的な経営支援を行い、中小企業者の経営力の強化を図ることを目的として創設された制度です。
金融機関と認定支援機関の連携支援を受けることを条件として、信用保証協会が行う信用保証制度を保証料の減免を受けて利用でき、信用保証制度を利用するハードルを下げるための制度です。
経営力強化保証制度は2012年10月1日からスタートしています。

ご利用いただける方
金融機関および認定経営革新等支援機関の支援を受けつつ、自ら事業計画の策定ならびに計画の実行および金融機関への当該計画の進捗報告を行う中小企業者です。

経営力強化保証の概要
・中小企業者が認定経営革新等支援機関の力を借りながら、経営改善に取り組む場合に信用保証料を減免(概ね▲0.2%)し、金融面だけではなく、経営の状態を改善する取り組みを強力にサポートします。
・中小企業者は、認定経営革新等支援機関の支援を受けつつ、自ら事業計画を策定・実行し、その進捗を金融機関に対して四半期毎報告していただきます。
(金融機関は経営支援の実施状況を含め信用保証協会に対して年1回の報告をします。)

②制度概要

③経営力強化保証制度を利用するメリット・デメリット[16]
ⅰ.経営力強化保証制度を利用するメリット

ア.保証制度が利用しやすくなる
経営力強化保証制度があれば、当然のことながら信用保証制度がより使いやすくなります。
通常の信用保証料率区分よりも1区分低い料率が適用されるため、少しでもコストを抑えて融資を受けたい中小企業や小規模事業者なども安心です。
金融機関からの融資が受けやすくなる信用保証制度をコストダウンで利用でき、資金調達のハードルが下がります。


イ.金融機関・認定支援機関からの継続的な経営支援が受けられる
経営力強化保証制度を利用することで、金融機関や認定支援機関の経営支援を継続的に受けられるようになります。融資を受ける前には事業計画の策定をし、そのあとは事業計画の修正などをしながら経営改善を目指すことになります。
その事業計画の策定や修正を通した経営改善において、中小企業や小規模事業者などの融資先は、金融機関や認定支援機関からアドバイスを受けられます。

ⅱ.経営力強化保証制度を利用するデメリット

ア.進捗状況の報告が必要
経営力強化保証制度を利用する際には、事前には第三者が納得できる事業計画を作成し、さらにそのあとも進捗状況の報告義務が発生します。
融資が実行されたあとも、立案した事業計画に基づいて事業が進められているか、報告が必要です。
中小企業や小規模事業者などが経営改善を実施する際には、元手となる融資を受けることも必要ですが、具体的な行動として従業員への説明や実行管理なども必要です。
中小企業や小規模事業者などの融資先が行う報告は、4半期に1回の頻度となっています。
また、報告書の作成はもちろん、必要に応じて事業計画の修正なども発生することもあります。


イ.金融機関の審査に100%通る保証はない
経営力強化保証制度を利用することで、金融機関の融資は受けやすくなりますが、それでも審査に100%通るという保証はありません。融資のために準備した事業計画書や各種必要書類も、審査に落ちて無駄になる場合もあります。

3.中小企業活性化協議会

(1)早期経営改善計画策定支援事業[17]

早期経営改善計画策定支援とは、資金繰りの安定や収益力の改善を目指す中小企業事業主と専門家の取り組みを支援する制度です。
中小事業主が、国から認定を受けた税理士や公認会計士などの専門家(認定経営革新等支援機関)の支援を受けたとき、費用(専門家に対して支払う費用やモニタリング費用)の2/3が補助されます。

①制度概要・手続きイメージ[18]

②事業のポイント

資金繰り管理や採算管理などの基本的な経営改善の取組を必要とする中小企業・小規模事業者を対象として、認定経営革新等支援機関が資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図といった経営改善計画の策定を支援し、計画を金融機関へ早期に提出することを端緒として、自己の経営を見直し経営改善を促すものです。

中小企業・小規模事業者が認定経営革新等支援機関に対し負担する早期経営改善計画策定支援に要する計画策定費用及び伴走支援費用について、中小企業活性化協議会が3分の2(上限25万円)を負担します。
また、計画遂行と併せて経営者保証解除に取り組む場合、金融機関交渉費用(認定経営革新等支援機関である弁護士に限る)について、中小企業活性化協議会が3分の2(上限10万円)を負担します。

③支援内容

国が認定する士業等専門家の支援を受けて早期の経営改善計画を策定する場合、専門家に対する支払費用の3分の2(上限25万円)を協議会が支援します。

・計画策定支援費用 上限15万円
・伴走支援(期中) 上限5万円(任意)
・伴走支援(決算期) 上限5万円
・金融機関交渉費用 上限10万円(任意)

まとめ

コロナ禍対応としての資金繰り改善策が相次いで廃止され、2024年12月まで継続されている中小企業施策・支援策についても延長されるかどうかは不透明です。
まずは、政府をはじめとする公的支援策を活用することで、資金繰りを改善し経営の安定を図りましょう。

出展:
[1]:今後の中小企業向け資金繰り支援
[2]:コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について
[3]:新型コロナウイルス感染症特別貸付
[4]:中小企業者に対する早期の経営改善や事業再生を後押しするための信用保証制度の要件を拡充します
[5]:経営改善サポート保証(コロナ対応)の制度概要
[6]: 中小企業政策審議会金融小委員会(第12回)事務局説明資料|中小企業庁
[7]:新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)
[8]:資本性劣後ローンの申し込みに補助金が使えるようになりました
[9]:経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)日本政策金融公庫
[10]:企業活力強化資金
[11]:挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
[12]:2024年7月以降の民間ゼロゼロ融資の同額借換方法 – 「小口零細企業保証制度」を利用
[13]:民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。中小企業庁
[14]:さまざまな保証制度 全国信用保証協会連合会
[15]:経営力強化保証制度のご案内 信用保証協会
[16]:経営力強化保証制度とは?メリット・デメリットと使い方
[17]:経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援事業・経営改善計画策定
[18]:「早期経営改善計画策定支援」を活用した民間金融機関による経営改善支援の促進