中小企業者のスムーズな融資実現!融資条件の決定要因と対策を解説
融資条件の決定要因は、融資申請を通すために考慮しなくてはならない重要事項です。
融資条件は、①財務状況や経営者の信用情報等の債務者の属性②融資の種類と資金使途③経済状況や金利水準等の市場環境④金融機関の政策等により決定されます。
それぞれの要因について具体的に詳しく述べていきます。
目次
Ⅰ.債務者の属性[1]
1.財務状況
企業や個人の財務諸表や収入証明書などが評価されます。収益性や資産状況が良好であれば、より良い条件で融資を受けられる可能性が高まります。
通常、銀行は企業から新規融資を申し込まれたとき
1決算書
2試算表
3銀行借入一覧表
4資金繰り表
の順番で確認を行い、企業の財務状況を確認します。
決算書は、企業の成績表です。銀行は決算書を見ることで、その企業の「優れているところ」「改善が必要なところ」を探しだすのです。
しかし、コロナ禍のような非常事態においては、銀行はいつもと違った方法で財務状況を確認します。
確認する資料の優先順位が逆転するのです。
1資金繰り表
2銀行借入一覧表
3試算表
4決算書
の順番で確認を行うのです。
平常時は、銀行は「その企業に将来性はあるかどうか」を重視して融資を検討します。
そのため、決算書や試算表などをみて、長期的な観点から融資をするかどうか検討します。
2.資産状況
不動産や預金などの資産がある場合、担保として利用できるため、融資条件が改善されます。
3.事業内容[2]
借り手の収入が安定しているかどうかが重要で、収入が高いほど融資額や金利が有利になります。
事業融資の場合、事業計画書や収益予測が重要な評価ポイントとなります。計画が具体的で実現可能性が高いと判断されれば、条件が有利になることがあります。
財務諸表分析を更に高度に分析することで取引先の事業状態を評価します。代表的なものとして「財務比率分析」「損益分岐点分析」があります。
(1)財務比率分析
貸借対照表科目の相互間、貸借対照表科目と損益計算書科目との比率により、会社の安全性、収益性、効率性等を分析する方法で、利用される比率の種類、計算方法、利用方法により評価が決まっています。
(2)・損益分岐点分析
損益分岐点分析は、全ての費用が営業活動=売上高の増減に係らず一定である固定費と営業活動に比例して増減する変動費に分解することができるという前提で、収益構造を分析する方法です。
基本的に、黒字体質の会社なのか否か、業況が悪化しても持ちこたえるだけの余力のある活動をしているのか否かを見極めることがポイントとなります。
4.経営者の信用情報
借り手の信用履歴や返済能力を示す信用スコア*1指標が高いほど融資条件が有利になります。
信用情報が良くない個人や企業は、金融機関から見てリスクが高いと判断され、融資の条件が厳しくなったり、融資自体が難しくなったりします。
過去に融資を受けた際の返済状況が評価され、遅延や未払いがあると条件が厳しくなります。
*1:信用スコアとは、個人の信用力(クレジット)を数値などの指標で表したもの。個人の返済能力や借入状況、信用情報機関でのデータなどをもとに算出される。金融機関が融資の審査や保険料の決定、クレジットカード発行の判断などに利用することが多い。
信用スコアが高いほど返済能力が高いとみなされ、有利な条件でサービスを受けやすくなります。
5. 保全状況(担保・保証)[1]
担保を提供する場合、その評価額が融資条件に影響します。担保があると、金利が低くなることが一般的です。
融資における「保全」(担保・保証)とは、返済が不可能となったときに代わりの方法で回収することを指します。
保全がされていれば、万が一融資した企業が潰れても、銀行が損をしなくて済むので、銀行がチェックする重要事項の一つです。
担保の具体例として、 不動産、有価証券、売掛金などがあります。
保証の具体例として、 第三者の保証人、信用保証協会の保証などがあります。
Ⅱ.融資の種類と資金使途
1.融資の種類
借入額が大きく、返済期間が長い場合、リスクが高くなるため、金利が高く設定されることがあります。
融資の種類の具体例として、返済期間:短期、中期、長期などがあります。
2.資金使途[2]
資金使途とは、融資を受けたお金を何に使うのかというものです。
金融機関はお金を貸し出す以上、貸したお金をどのように使って返済のためのお金を作るのかを非常に気にします。そして、そのお金の使い道が返済原資につながらないようであれば、お金を貸すことはできません。
提出された決算資料から資金使途の妥当性を検証していますが、代表的である「設備資金」と「運転資金」の見方を簡単に説明します。
(1)設備資金
①設備投資の目的に応じた、経営上の必要性と妥当性
②所要資金の総額、借入金額の割合、銀行別割り振り
③設備投資後の収支計画
の3点につて確認しますが、重要なのは設備投資の目的と妥当性です。
事業規模に応じた計画なのか否か、更には投資が不調の場合でも体力的に問題は生じないのか否かを考えます。
以上の2点を考慮した上で、設備投資後の収支計画を正しく策定することが可能か否か、がポイントとなります。
つまり、投資後の売上予測も含め、最終的に借入金を返済できるのか否か返済原資の見極めを行います。
(2)運転資金
会社が事業を行う場合、一定規模の在庫を保有し、売上金を回収するまでに一定の期間を要することが一般的です。
一方、売上金が回収なる前に在庫の支払や経費の支払が必要になります。
このように、通常の営業活動で必要となる資金を経常運転資金として、貸借対照表の科目残高を使用して以下の算式により検証します。
経常運転資金=売上債権(受取手形+売掛金)+在庫-仕入債務(支払手形+買掛金)
Ⅲ.市場環境[3]
1.金利水準
経済全体の金利水準が融資条件に影響を与え、金利が高い時期は融資条件が厳しくなることがあります。
金利の上昇は、それが借入に影響を及ぼすだけでなく、広範囲にわたる経済の動きにも影響を与えます。
例えば、銀行から資金を借りて事業を展開する企業にとっては、金利の上昇は融資費用の増大を意味し、その結果、企業の活動自体が制約されるからです。
2.経済状況
経済が好調な時期は融資条件が緩和されることが多いが、不況時は厳しくなる傾向があります。
経済状況の変動は、借入環境の悪化に大きな影響を及ぼします。経済が衰退すると、企業の業績が停滞し、個々の所得も減少するからです。
3.金融政策
金融機関は金融政策を考慮に入れて融資政策を決定します。
金利が上昇し、経済状況が不安定な場合、金融機関はリスクを回避しようとして融資を縮小する可能性があります。
Ⅳ.金融機関の政策
1.リスク管理[2]
(1)貸付方針
各金融機関には独自の貸付方針があり、これに基づいて条件が決定されます。
金融機関の貸付方針は、借入人の信用評価やマクロ経済の状況、さらには自身の経営状況を考慮し設定されます。
内規や法律に則った中で、返済能力があると確信できる借入人にしか貸し出しを行わないことが基本です。
(2)信用格付
取引を行えるか行えないかの判断根拠となる「信用度」を銀行内部では「信用格付」と表現しています。
信用格付とは、融資する取引先が契約している間に倒産したりして融資した資金が回収できなくなる危険性を、会社が提出する決算数値や事業の概況を客観的に評価して、一定のルールに基づいてランク分けするものです。
信用格付けは、基本的に会社の業績を表す決算書=財務諸表の数値を基に算定、体系化されるのが一般的ですが、財務数値には現れない会社の力や経営者の資質(金融機関では定性情報ともいう)についても考慮して決定されます。
2.他行動向[1]
他の金融機関との競争状況も影響し、競争が激しい場合は条件が緩和されます。
銀行は、融資対象企業そのものだけでなく、その企業が取引をしている他行の動向も注視します。
日本の金融機関には「メインバンク制度」という独特の制度があります。
新規融資を行うときや、リスケジュールを行う場合など、銀行とのやり取りに変化があるとき、真っ先に動くのがメインバンクなのです。
そのほかの取引銀行は、メインバンクの動きにしたがうことが多いです。
融資は、企業と取引銀行の2者間だけでの問題ではありません。ほかの取引銀行との兼ね合いも重要なのです。
この取引銀行どうしの関係性を「バンクフォーメーション」といいます。
Ⅴ.重要融資条件である利率を決定する要素[4]
法人が借入するにあたって、金利が発生します。
利率を決める主な要素として、以下で紹介する項目が考えられます。
1.返済期間
基本的に返済期間が長くなると、適用される利率も高くなります。
返済期間が長いということは、貸し付けている側からすればずっと貸し倒れリスクを背負うことになるわけです。
2.担保や保証人の有無
基本的に担保や保証人をつけられれば、低い利率が設定されます。
担保をつければ、最悪返済が滞ったとしてもその担保を差し押さえてしまえばいいわけです。
保証人がいれば、直接債務者からの返済が不能になっても保証人に催促できます。
担保も保証人を付けないときと比較して、不良債権化するリスクが低くなります。
3.リスク
そもそも貸し手が金利をつけるのは、もし貸したお金が回収できなくなった時のためのリスクマネジメントという側面があります。
貸し倒れリスクの高い法人に対しては、それなりに高めの利率の設定される可能性があります。
貸し倒れリスクの判断基準ですが、いくつかあります。企業の信用力や返済能力、直近の事業状況、過去の信用情報など総合的に判断されます。
一般的に初めて借り入れる際には、上限金利かそれに近い利率が適用される可能性が高いと言えます。
返済実績がないので、貸したお金を返済してもらえるかどうか未知数だからです。
4.金融業者の収益
金利を取るのはリスクマネジメントのほかに、収益を確保する目的もあります。
利益確保する目的で、金利設定されるわけです。
まず金融業者がどの程度経費を負担しているかが、利率決定のベースになります。
金融商品や有価証券の売買費用などの事業経費や人件費にオフィス賃料、光熱費などの諸経費などが含まれます。
また金融業者としてみれば、金利は大きな利益の一つです。
どの程度の利益を確保したいかによって、金利設定は左右されます。
まとめ
融資条件の決定要因として、①債務者の属性②融資の種類と資金使途③市場環境④金融機関の政策等をあげてきました。
融資を申し込む前に、これらの要因を重視して対策をしておくと、有利な融資条件を得られるようになります。
出展:
[1]:銀行が融資するときに見る3つのポイント
[2]:ポスト金融円滑化法対策「銀行融資業務の実際」
[3]:借入環境悪化の理由とキャッシュフローを守る方法
[4]:法人が資金を借り入れるにあたっての金利相場は?利率の決まり方について解説