融資の流れと必要書類
事業の資金調達として、融資を検討する事業者は多いでしょう。
審査に通過するには、必要書類を揃えることがスタートです。
本記事では、銀行と日本政策金融公庫、信用保証協会の、融資の流れと必要書類を詳しく見ていきます。
Ⅰ.銀行融資

1.銀行融資の流れ[1]
銀行融資は、申し込みから融資実行まで次の6つの流れで手続が進みます。
1.申し込み
2.必要書類の提出
3.面談
4.審査
5.契約
6.融資実行
それぞれの流れと手続について説明します。
(1)申し込み
融資の流れとして、まず申し込みが必要です。
また、事前に相談しておけば融資条件や承認された事業者の傾向、用意しておきたい資料などを把握しておくことができます。
(2)融資の必要書類提出
申し込みの後は必要書類の提出が必要です。
申し込み後に銀行から提出するように求められた書類を揃えることが必要ですが、作成や準備には時間がかかることもあります。
漏れや不備があると審査に時間がかかることになるため、提示された期日までに提出できるように事前の準備も必要です。
(3)面談
融資担当者との面談では、借りたお金を何に使うのか、どのように返済するのかなどを聞かれます。
書類上では判断できない経営者の人物像なども見られるため、明確に意思を伝えられるようにしておきましょう。
(4)審査
提出した書類や融資担当者との面談を参考とした審査が行われます。
融資の可否以外にも融資可能額・金利・返済期間などの条件についても審議されます。
(5)契約
審査で返済能力に問題なく信頼できると判断されたら契約を結ぶことになります。
通過の通知と契約手続の案内が届きます。
その後、複数の契約書を提出し、内容などに不備がなければ契約締結となります。
(6)融資実行
無事契約を締結した後は、銀行口座に借入れたお金が入金されます。
2.銀行融資に必要な書類[2]
銀行融資に必要となる書類は、法人と個人事業主によって異なります。また、銀行や融資の内容によって、求められる書類が異なる場合もあります。ここでは基本的に必要となる書類について説明していきます。
実際に融資を申し込む際は、事前に銀行に確認し、不備がないように書類を用意しましょう。
必要書類一覧表
法人 | 個人事業主 | |
必要書類(共通) | 決算書(貸借対照表・損益計算書など) 試算表 資金繰り表 事業計画書 銀行取引一覧表(銀行取引明細表) 納税証明書 | |
必要書類(各々) | 商業登記簿謄本 | 本人確認書類 |
これらの必要書類について、以下で詳しく説明していきます。
(1)決算書
決算書は通称の呼び名で、正式には財務諸表といいます。一定期間の財政状態や経営成績が記載された書類のことで、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書などが財務諸表に該当します。
銀行融資では、貸借対照表と損益計算書が必要となります。個人事業主は、確定申告書の提出でも大丈夫です。
銀行側は、貸借対照表と損益計算書を総合的に分析し、事業の継続性や将来性を見ています。赤字状態が続いているなど収益性が低いと判断された場合、当然ながら審査に通過するのは厳しくなります。
ただし、一時的な赤字であり将来的に成長が見込める場合は、融資を受けられる可能性もあります。
(2)試算表
試算表とは、期中における事業の資産や負債、売上・利益をまとめた集計表のことで、月次で作成します。決算書は年に一回のみの作成となるため、銀行は直近の財務状況を確認するために試算表を参考にします。
決算から3ヶ月以上経過している場合、銀行から試算表の提出を求められることがあります。
(3)資金繰り表(共通)
資金繰り表は、一定期間における全ての収入と支出をまとめた集計表で、現金収支の流れを把握するために使われます。
銀行側は融資したお金をきちんと返済できるかどうかを見極めるために、資金繰り表を重視します。
(4)事業計画書
事業計画書は、ビジョンや事業内容、戦略などを記載する書類で、今後どのような経営戦略で成長していくのかを明らかにします。
銀行は、事業計画書を通して事業の成長性や融資の返済能力を見ています。そのため、市場動向や自社の強み、成長戦略による売上・利益の見込みなどが伝わるようにしっかり作り込むことが大切です。
(5)銀行取引一覧表
銀行取引一覧表は、事業者が実施している銀行との取引状況を確認できる書類で、各銀行ごとの預金残高・借入金・借入残高などを記載します。
銀行はリスクを回避する上で、融資を受ける時点でどれくらいの借入があるかを確認します。
(6)納税証明書
納税証明書は、所得税や法人税など、納付すべき税金を納めているかを証明する書類です。納税証明書の取得方法は、税務署の窓口で申請する、または郵送してもらう方法があります。
(7)本人確認書類(個人の場合)
個人事業主の場合、運転免許証をはじめとする身分を証明するための書類の提出を求められます。
Ⅱ.日本政策金融公庫[3]

1.日本政策金融公庫の融資の流れ
日本政策金融公庫の融資は、申し込みから融資実行まで次の9つの流れで手続が進みます。
1.事業資金相談ダイヤルに電話する
2.支店窓口へ訪問する
3.必要書類を準備する
4.借入申込書と必要書類の提出
5.融資の面談
6.融資審査
7.融資の決定
8.融資の振り込み
9.返済の開始
それぞれの流れと手続について説明します。
(1)事業資金相談ダイヤルに電話する
まずは日本政策金融公庫が設置している「事業資金相談ダイヤル」へ電話し、融資制度の概要や手続き方法の案内を聞くことができます。疑問点などを質問することも可能です。
(2)支店窓口へ訪問する
お近くの日本政策金融公庫の支店窓口へ訪問し、融資申し込みを行う前に相談をしておくと、その後の手続きがスムーズに行えます。
事業計画書の案を事前に持参して、融資担当者より具体的なアドバイスをもらうことが可能です。
窓口となる支店は、法人の方は本店所在地、個人事業主の方は事業を行っている住所の近くの支店となります。
(3)必要書類を準備する
融資の申し込みに必要となる書類を準備します。
(4)借入申込書と必要書類の提出
書類が準備できたら借入申込書の記入を行います。借入申込書は日本政策金融公庫の窓口、またはHPよりダウンロードすることができます。
提出は窓口での提出の他に郵送での提出、オンラインでの提出が可能です。
【借入申込書へ記入する項目の一例】
・申込人名(押印を含む)と申込人の住所
・申込人の連絡先(電話番号またはメールアドレス)
・借入希望額
・借入希望日
・希望の返済期間
・毎月の返済希望日
・返済金を支払う銀行口座の情報
・資金の使いみち
・創業年月
・業種
・申込人または法人代表者の家族の氏名、年齢、職業
インターネットからの申し込みもできる。
インターネットから申し込む場合、必要書類をアップロードしなければ申し込み手続きが完了しないため、インターネットから申し込みたい人は事前に必要書類を準備しておく必要があります。
(5)融資の面談
借入申込書を提出すると、日本政策金融公庫から面談の日時の連絡があります。
資料に書いたことを担当者の前でしっかり説明できるように準備しましょう。また、現在の事業内容や決算書の内容についても質問されますので、決算書の中身をしっかり把握しておく必要があります。
(6)融資審査
面談と提出した書類をもとに融資審査が行われます。場合によっては担当者によるオフィスや設備投資を行う工場などの視察が行われ、融資を行うかどうか審査されます。
融資審査は約1週間から2週間ぐらいで結果が通知されます。
(7)融資の決定
融資審査に合格すると融資契約に必要になる契約書や借用証書等の書類が送付されてきます。必要事項を記入し、日本政策金融公庫へ返送することで融資契約が完了します。
(8)融資の振り込み
融資契約が完了すると、日本政策金融公庫から融資の振り込みが行われます。基本的には融資契約書などの書類が日本政策金融公庫に到着して3営業日後に指定の銀行口座へ振り込まれます。
(9)返済の開始
返済予定表に従って借入金の返済が開始されます。据え置き期間を選択している場合、据え置き期間中は利息のみの支払いになり元金の返済はありません。返済は銀行口座から自動振替により行うことが一般的です。
2.日本政策金融公庫の融資で必要となる書類[4]
日本政策金融公庫の融資の申し込みには以下の書類が必要になります。個人事業主と法人で必要書類がやや異なりますが、ほとんどの書類は共通です。状況に応じて追加で書類が必要になる場合があります。
用意する書類の主なものは次のとおりですが、必要に応じて補足資料が求められます。
会社案内、製品カタログなどの参考資料
法人の登記事項証明書
最新3期分の決算書・税務申告書
納税証明書
最近の試算表(決算月から時間が経っているかた)
設備投資を行うときは、概要のわかる資料(見積書等)
担保の内容がわかる資料(登記事項証明書など)
Ⅲ.信用保証協会

1.信用保証協会の保証付き融資の審査の流れ[5]
(1)信用保証協会に事業者が直接審査を申し込む場合
①信用保証の申し込み
全国には、51の信用保証協会があります。ご自身で信用保証協会に直接、審査の申し込みをする場合には、事業所の最寄りの信用保証協会を調べて窓口に出向きます。
信用保証協会の窓口で保証付き融資についての相談をすると申込書が配布されるため、必要事項を記載の上、指示された書類を添付して提出をします。
②保証審査
申し込みを受け付けると、信用保証協会が保証審査を行います。保証審査の過程において、必要に応じて事業所への訪問や事業者への面談が行われるケースもあります。
③審査結果の通知
保証審査の結果が通知され、審査に通過した場合、信用保証協会から銀行などの金融機関に融資の斡旋が行われ、金融機関の承諾後に「信用保証書」が発行されます。
④金融機関での融資審査
金融機関に融資を申し込み、融資の審査が行われます。
⑤融資実行
融資審査の結果、融資適当と判断されれば信用保証書に記載された条件に従って融資が実行されます。
(2)金融機関を通じて信用保証協会に審査を申し込む場合
①金融機関での融資審査と信用保証の申し込み
金融機関に融資の申し込みをします。金融機関が融資適当と判断をすると、金融機関が信用保証協会に信用保証委託申込書と信用保証依頼書を提出し、信用保証の申し込み手続きが行われます。
②保証審査
金融機関から提出された書類をもとに、信用保証協会が保証審査をします。
③審査結果の通知
審査の結果、保証承諾を行う場合は金融機関に信用保証書が発送されます。
④融資実行
金融機関では、信用保証書を受け取ると、信用保証書に記載された条件に従って融資を実行します。
(3)窓口は金融機関と信用保証協会のどちらを利用すればよいか[6]
信用保証付き融資の手続きの窓口は、主に「金融機関」と「信用保証協会」の2つがあります。「どのように使い分ければよいのか」「どちらを優先すればよいのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。
原則として、既に金融機関との融資取引などがある事業者の場合は「取引先金融機関」を窓口として手続きをすることになります。金融機関を飛ばして直接、信用保証協会に申し込むケースは少ないでしょう。
日頃からコミュニケーションを図っていて、取引のある金融機関に相談することをお勧めします。
2.信用保証協会の保証付き融資の必要書類[7]
千葉県信用保証協会の保証申込みには、主に次の書類が必要となります。
(1)通常のお申込み
信用保証委託申込書 | 原則として、お申込みの都度、毎回必要となります。 |
保証人等明細 | |
信用保証依頼書 | |
申込人(企業)概要 | |
信用保証委託契約書 | 申込時ではなく貸付実行時に作成・提出していただきます。 |
個人情報の取扱いに関する同意書 | 原則として、初めてご利用いただく際に必要となります。 |
履歴事項全部証明書(写) | 初めてご利用いただく際に最近3か月以内のものが必要となります(写し可)。 2回目以降は、原則として前回までの利用時から変更のあった場合に必要となります。 |
定款(写) | 原則不要ですが、以下のいずれかにあてはまる場合に必要となります。 ・法人設立後第1期決算申告前の場合 ・創業関連保証で初回保証申込の場合 ・その他当協会が必要とする場合 |
印鑑証明書 | 初めてご利用いただく際に最近3か月以内のものが必要となります(写し可)。 2回目以降は、原則として前回までの利用時から変更のあった場合に必要となります。 |
確定申告書(写) (決算書) | 原則として、直近2期分が必要となります。 |
残高試算表 | 原則として、決算期から6か月以上経過している場合に必要となります。 |
(2)その他必要に応じて
納税証明書または 納付(写) | ご利用いただく制度要綱に定められている場合等に必要となります(写し可)。 |
許認可証(写)等 | 事業上必要な許認可証等(主たる事業の主たる事務所)の写しが必要となります。 |
宣誓書(建設業) | 建設業許可を必要としない軽微な建設工事のみを請け負う建設業者の方について、お申込みの都度、毎回必要となります。 |
受注明細書 | 工事見合い資金の場合等に必要となります。 |
住民票または在留カード(写) もしくは特別永住者証明書(写) | 申込人(法人代表者を含む)または連帯保証人が外国人である場合に、在留資格および在留期間(満了日)等の確認のために必要となります。 |
(3)設備資金のお申込みや担保を提供いただく場合
見積書(写)または 契約書等(写) | 設備資金の場合に必要となります。 |
建築確認申請書(写) | 建築確認が必要な建物の建築資金の場合等に必要となります。 |
賃貸借契約書(写) | 賃借物件の改装資金の場合等に必要となります。 |
設備資金検討表 | 設備の内容や投資効果、返済予定について記載いただくものであり、設備資金の場合に必要となります。 |
不動産登記簿謄本 | 新規担保提供時に最新のものが必要となります。 |
公図(地積・測量図) | |
建物図面・各階平面図 | |
住宅地図(所在地略図) | |
建売計画書 | 不動産建売プロジェクトに係る資金の場合に必要となります。 |
まとめ
融資を受けるためには、融資の流れに沿って融資の必要書類を不備なく揃えることが大切です。
当記事を参考に、融資の実施に役立てていただければ幸いです。
出展:
[1]:銀行融資の必要書類とは?流れや作成のポイントも解説
[2]:銀行融資に必要な書類とは|融資実行までの流れも解説
[3]:日本政策金融公庫の融資の流れと必要書類
[4]:日本政策金融公庫HP
[5]:信用保証協会の保証付き融資を受けたい!審査の流れとポイントとは?
[6]:融資の申請手続き(3)信用保証付き融資
[7]:千葉県信用保証協会(お申込み方法について)