中小企業の融資状況と課題

本稿では、まず感染症が融資に与えた影響と、中小企業の融資の動向や経営課題について確認します。
さらに、中小企業の融資課題について整理します。

.中小企業の融資の現状[1]

融資の現状
融資の現状

1.政府系金融機関の融資・保証

第2-1-33図は、政府系金融機関である(株)日本政策金融公庫及び(株)商工組合中央金庫における融資承諾件数の推移について見たものです。(株)日本政策金融公庫は、外的要因により一時的に業況が悪化している企業への貸付制度「セーフティネット貸付」に加えて、2020年3月17日に「新型コロナウイルス特別貸付」の取扱いを開始し、申込みが急増しました。
また、(株)商工組合中央金庫でも危機対応業務の一つとして「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を立ち上げ、申込みが急増しました。

第2-1-34図は、信用保証協会への信用保証の承諾件数の推移について見たものです。
2020年3月までにセーフティネット保証4号、同5号、危機関連保証の認定制度が立ち上がり、5月1日から民間金融機関における実質無利子・無担保融資制度が立ち上がると、これに伴う信用保証の申込件数が急増しました。

2.中小企業における支援策の活用状況

第2-1-37図は、感染症流行後に活用した支援策について、従業員規模別に見たものです。
持続化給付金は従業員規模の小さい企業、雇用調整助成金は従業員規模の大きい企業で活用した割合が高いことが分かります。

業種別に見たのが第2-1-38図です。
宿泊・飲食・生活関連サービス業では、ほとんどの支援策で活用割合が高いことが分かります。感染症の影響が大きかったこれらの業種では、各種支援策の支援対象要件に該当した企業が多いことが推察されます。

3.中小企業向け貸出残高の推移

第2-1-43図は、中小企業向け貸出残高の推移について、中小企業向けに貸出しを行う金融機関の業態別に見たものです。
減少傾向にあった政府系金融機関の貸出残高が2020年に入り大幅に増加していることが分かります。
また、リーマン・ショックの起きた2008年以降は、国内銀行・信託では貸出残高が減少傾向にありましたが、感染症流行下では大幅に増加しています。
民間金融機関においても、実質無利子・無担保融資制度を活用しながら、積極的な融資姿勢を示したことが推察されます。

4.2024年4月に民間ゼロゼロ融資の返済開始時期を迎えた事業者の状況[2]

2024年4月に民間ゼロゼロ融資の返済開始時期を迎えた案件(約4万件)のうち、約9割が完済・返済を 開始しています。

(参考)民間ゼロゼロ融資の返済状況(業種別)

民間ゼロゼロにおいても、 2024年4月末時点で5割近くが返済中。 ただし、宿泊業については、据置期間 中と条件変更の比率が高くなっています。

.中小企業の状況[3]

中小企業の状況
中小企業の状況

1.中小企業の業況と経営課題

(1)中小企業の業況

2023年は、年末にかけて売上げの好転に一服感が見られたものの、中小企業の業況判断DIは高水準で推移し、経済の状況が全体として改善する基調が継続しました。

(2)中小企業の経営課題

売上不振のほか、原材料高や求人難の割合が高い状況です。

2.環境変化に対応する中小企業

(1)中小企業の成長意欲

足下では、約9割の中小企業が投資行動に意欲的な経営方針を示しています。
挑戦意欲のある中小企業は、域内経済の牽引や外需 得に貢献し、上げを可能にする持続的な利益を生み出すような企業へ成長することが期待されます。

3.中小企業の成長投資

企業の成長には、人への投資(人 育成の取組等)のほかにも、設備投資、M&Aといった投資行動が有効である可能性があります。設備投資やM&A、デジタル化に取り組む中小企業が増加しています。

(1)中小企業の設備投資

(2)中小企業のM&A実施件数

(3)中小企業のソフトウエア投資

4.小規模事業者の経営課題

(1)売上不振

小規模事業者は、中小企業と比べて売上不振の割合が高く、厳しい経営環境にあります。

(2)販路開拓や人手不足、資金繰り等の経営課題

小規模事業者は販路開拓や人手不足、資金繰り等の経営課題を重視する傾向にあり、これらの課題に対応しながら、売上げを確保し事業を持続的に発展させていくことが重要です。

.中小企業の融資課題[4]

融資の課題
融資の課題

1.中小企業経営者が抱える融資課題

融資について、税理士・公認会計士からアドバイスを受けたいことを質問したところ、中小企業経営者の融資課題が浮き彫りになりました。

質問の回答結果は、
1位:「自社に適した資金調達先の選び方」(94件)
2位:「自社に適した借り方(金額・金利・返済方法)」(69件)
3位:「融資が受けやすくなる方法」(67件)
で大変重要な中小企業の融資課題です。

まとめ

足元で大きく事業環境が変化する中で、中小企業の経営課題について把握し今後の戦略を見直ことが有用です。                    また、「自社に適した融資先の選び方」などの融資課題対策を行い、必要な融資を確保しましょう。

出展:
[1]:2021年中小企業白書第2節 新型コロナウイルス感染症が与えた影響と資金調達の動向
[2]:中小企業庁HP
[3]:2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要
[4]:中小企業の資金繰り・資金調達に関する調査|資金調達の目途が立っていない事業者は約6割