ものづくり補助金を使った自動車整備業の技術革新(新技術対応)

低下しつつある国内製造業の競争力を高めるため、ものづくりやサービスの技術革新が求められています。

この記事では、自動車整備業の技術革新について、新技術対応の視点から
・自動車整備業の外部環境
・新技術対応の技術革新
についてご紹介します。

技術革新をするにはどうすればよいか考えている事業主の方の、参考になれば幸いです。

Ⅰ.自動車整備業の技新術に関する外部環境

外部環境(新技術)
外部環境(新技術)

1.国の政策

(1)大気汚染防止法の改正

大気汚染防止法の改正により、平成16年からVOC(揮発性有機化合物:Volatile Organic Compound) 排出規制が導入されました。

(2)労働安全衛生法の改正

平成25年からVOCによる作業者 の健康被害を考慮した排出規制が導入されており、VOC排出が少ない水性塗料への切り替え等の対応 が今後重要になってきています。

ただし、水性塗料は塗料が乾燥するまでの温度管理や粉塵対策が重要 であり、塗装ブース等の導入など大規模な設備投資が必要になってきます。

(3)ものづくり・商業・サービス革新補助金制度

国際競争力向上や新産業創出を促すため、中小企業の技術革新や新サービス開発を支援する補助金。正式名称は「ものづくり・商業・サービス革新補助金」。
「中小ものづくり高度化法」(平成18年法律第33号)などに基づき、経済産業省と中小企業庁が2009年度(平成21)補正予算編成時に創出した補助制度。

試作品や新商品の開発、新サービスの導入、設備投資などを行う中小企業を対象に、かかった原材料費、機械装置費、人件費などの費用の3分の2までを補助。
補助上限は1000万円。ものづくり補助金は工作機械などの設備投資を促す効果が大きく、景気対策の一環として毎年、補正予算編成時に予算規模や補助内容を決定。*1

*1:12次募集では、補助上限額750万円~3,000万円、補助率1/2もしくは2/3[1]

2.自動車業界の動向

(1)水性塗料

 今までは、自動車塗装に用いられる塗料は油性塗料が主流で したが、油性塗料には VOC と呼ばれる大気汚染を引き起こ す物質が含まれています。
VOC 排出は国際的に規制が行われ ており、欧米ではかなり前 から水性塗料の導入が義務付けられています。

自動車塗装の主流は世界規模で水性塗料にシフトしており、外国車はもちろん、国産車においても水性塗装のニーズが急拡大しています。
日本最大手の自動車メーカーであるトヨタは、既に将来全ての塗料を水性塗料に 変更すると発表しています。

(2)エアコンガスの規格[2]

1990年代より、従来のR12に代わる冷媒としてカーエアコンに広く用いられてきた代替フロン・R134aが、徐々に新たな冷媒・R1234yfへと切り替わりつつあります。

これは、R134aにオゾン層の破壊効果はないもののGWP(地球温暖化係数)がCO2の1に対し1430と高いことによるからです。
1987年に採択されたモントリオール議定書が2016年10月にルワンダの首都キガリで改正され(キガリ改正)、代替フロンについても生産・使用量の削減が義務づけられたことで、GWPが1と極めて低いR1234yfへの代替が促されました。

キガリ改正を受けて、日本自動車工業会は2017年から23年までの間にすべての新車の冷媒をR1234yfとする目標を設定。
日本政府も2018年7月にオゾン層保護法を改正し、R134などの生産・輸入・使用量の上限を定めることとしています。

こうした動きに並行するように、トヨタは現行レクサスLS、カローラスポーツ、クラウン、センチュリー、レクサスESなどに相次いでR1234yfを採用。
最大手のトヨタが量販車種に用いたことで、他社もこれに追随。

ガス の性質としても「R134a」が不燃性に対して「R1234yf」は可燃性であり、エアコン整備に使用する設 備も変わってきます。

Ⅱ.自動車整備業の新技術対応技術革新[9]

新技術対応の技術革新
新技術対応の技術革新

1.水性塗料対応

(1)水性塗料の課題[3]

①ピンポールとなっ て塗膜欠陥

 沸点はトルエンと同等であるが、蒸発潜熱が極 めて大きいので蒸発が遅い。
このため、塗膜硬化 過程(自動車塗装では、一般的に130〜150℃・15 〜20分程度)で、比較的遅くまで塗膜中に残存し、 バインダー樹脂の架橋がある程度進んでから突沸 のように飛び出すと、その跡がピンポールとなっ て塗膜欠陥につながる。

②垂れて膜厚が不均一

有機溶剤型塗料では、霧状の 塗料粒子が塗装機からボディーまで飛行する間の 溶剤蒸発や、蒸発速度とバインダー樹脂の溶解性 が異なる複数の溶剤を併用することで、微粒化か ら、塗着後のタレや配向、さらには塗膜表面の平 滑化(レベリングと呼ばれる)までを制御できる。

 一方、水の場合は蒸発が遅く、飛行中の粘度上昇 はほとんど期待できない。
また、他の溶剤を併用 することも原則できないので、「塗装時は低く、 塗着後は高く、ただしレベリングのための流動性 は必要」という粘度制御の手段を考える必要があ る。

③温湿度の調整が必要

水は蒸発潜熱が大きいので、加熱乾燥 に要するエネルギーが大きい。
塗装環境の温度や湿度に蒸発速度が大きく依存するので、自動車塗装のように多層構造の塗膜構成で高外観が必 要な場合には、温湿度の調整が必要になり、その ためのエネルギーも必要となる。

(2)最新次世代型塗装ブース[4]

SAIMA タイタン ビッグベータ DX

特長
・安定した風流と風量・・・シロッコファンを採用
・キレイなエアー・・・LSI製作室と同等の天井フィルターを使用
・簡単操作コントロールボックス
・効率的なヒーティングシステム・・・燃料コストの削減
・明るい室内・・・蛍光パネルを採用
・保温性能が良い・・・断熱パネルを採用

(参考価格:17 60万円)

2.調色作業

(1)調色とは[5]

調色は、一般には「色合わせ」と呼ばれ、指定された色彩の塗料を作る作業です。
まず、少量で予備調色し、次に指定量となるように増量します。
作業手順は以下に示す①~③に要約でき、作業が進められます。

①塗料の原色のうちから、使用するものを選択する。
②この原色の少量を適宜調合して、指定された色彩の塗料を作り出す。
③要求された量になるように、原色の割合を変えることなく増量する。

調色をするためには、見本色の確認をする(見本色は、一般に、塗装された現物や塗り板、色見本帳やマンセル記号で提示される)ことと、指定された塗料から使用できると思われる原色の塗料を選択することが重要な作業です。

(2)調色作業の課題[5]

 塗装作業の作業スピード(リードタイム)および品質のバラツキを大幅改善する必要があります。
鈑金塗装の作業工程において習熟度によって、作業スピード、作業品質が最も顕著に現れる工程が塗 装作業における調色作業です。

自動車補修の現場ではカーメーカーのカラーコード毎に塗料メーカーが作成している配合データを参 照して調色する計量調色が主流です。
しかし同じカラーコードでも、新車生産ライン、経年劣化など により微妙に色が異なっているため、実車との比色および微調色によって、色を合わせていく必要が あります。

また近年、軽自動車を中心として、有彩色やパステルカラーの採用車両が増加したことで、工場に持 ち込まれる車両の塗色は多様化しており、調色作業に求められる知識、技術レベルはより高まってい ます。

調色の難しい色が増加する中、スタッフごとの作業時間の差が生まれやすく、熟練技術者に頼ってし まうという状況が続いています。

(3)調色作業効率化ツール[6][7]

ロックペイント株式会社製 クラウドコンピューティング調色システ厶 ドクタ—ロックⅣ

『ドクターロックIV』は、自動車補修塗装作業の中で調色作業を、測色計及び各種機器を用いて支援するクラウドコンピューティング調色システムです。

複雑なコンピューター計算ロジックを介して調色作業を誘導。
従来5~6回の調色回数が1~2回になり、調色時間と労力を大幅に減らすことができるため、特にビギナーの即戦力化を実現するための強力な支援ツールとなります。
また、通信環境がなくても作動可能なスタンドアローン型設計のソフトウェアですので、さまざまな場所で使用できます。

(参考価格: 285万円)

3.環境に配慮したエアコンガス対応

(1)エアコンガス「R1234yf」修理の課題

ガスの規格によってインバーターコンプレッサーが異なっているため、従来の装置では「R1234yf」のエアコンガスの修理依頼が来ても、受けることが出来ませんでした。

しかし、今後は環境にやさしい「R1234yf」対応の車種が増加してくるこ とから、整備を積極的に受けていける体制を構築する必要があります。

(2)新規格エアコンガス対応2ガス整備キット[8]

2ガス対応 カーエアコンサービスステーション PSPPSDUALPRO

インバーターコンプレッサーを2基搭載したフラッグシップモデル。
HFC-134a/HFO-1234yf デュアル対応:1台で従来のR134aガスと新冷媒R1234yfガスのどちらにも対応出来る、カーエアコンサービスステーション。

ガスの不純物を99.99%まで除去できる技術(特許)を搭載。

販売価格(税込)2,860,000 円

4.ものづくり補助金を使った自動車整備業の技新術対応技術革新のすすめ

(1)新技術対応の装置は高価

最新次世代型塗装ブース:17 60万円
クラウドコンピューティング調色システ厶:285万円
2ガス対応 カーエアコンサービスステーション:286万円

新技術対応の装置は高価なので、自費で導入すると財務的に負担が大きいです。

(2)ものづくり補助金で採択される可能性

ものづくり補助金申請の重要な審査項目の革新性を出しやすいです。

革新性の要素である、業界で使用例がまだ少なく、近隣地域で初めての可能性大だからです。
また、新しい装置なので技術的な課題が多く、工夫し解決すれば強く革新性を出せます。

(3)ものづくり補助金は、持続的成長のために有効

補助金は補助上限額750万円~3,000万円、補助率1/2もしくは2/3で、獲得できれば財務的負担を大幅に軽減できます。

また装置導入すれば、差別化でき競争力をつけられます。
100年に一度の大変革期で業界2極化が起こると言われています。
ものづくり補助金を活用した技術革新により、生き残りが図れ持続的成長の基礎を固められます。

まとめ

国際競争力はもとより、社会情勢の変化や今後の競争を生き抜くためには、自動車整備業では事業現場の技術革新がより重要になっています。

そのためには、国の補助金制度の活用も有効です。

当社では、ものづくり補助金を利用した各種ソリューションをご提案可能です。
ぜひ一度ご相談ください。

出展:
[1]:令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(12次締切分)
[2]:新型クラウンやカローラスポーツにも採用されている低炭素エアコン冷媒・R1234yfへの備えは充分か?…オートサービスショー2019・イヤサカ
[3]:工業用塗料における水性化の現状と課題 ~自動車用塗料を題材として~
[4]:株式会社スピーディHP・サイマ(イタリア製上下圧送式塗装ブース)
[5]:一級塗装技能士よつば塗装店
[6]:ロックペイント株式会社製 クラウドコンピューティング調色システ厶 ドクタ—ロックⅣ
[7]:ロックペイント株式会社HP
[8]:2ガス対応 カーエアコンサービスステーション PSPPSDUALPRO
[9]:【ものづくり補助金】を使った自動車整備業の技術革新事例